氷が溶けるまで


朝、鏡を見れば真っ赤に腫れた瞼
頬には涙の後があった

アールを鳥かごから出せば
ぐっと羽を伸ばした
そんな彼を私は抱きしめた

『…アー、ル』

“……優季”

『ごめん…ね、』

アールは何も言わずに私の涙を嘴で拭ってくれた
優しいね、アール

アールを窓から離すと何処かへ飛んで行った


ハーマイオニー達に気がつかれないように
そっと寮を出てマダムポンフリーの所へ行く

『おはようございます、』

「おはよう…まぁ、まぁ、まぁ!
いつもはぱっちりとした目が台なしね」

マダムは氷の入った袋を渡してくれた

「それでよーく冷やしなさい。
また氷が無くなったらいらっしゃいな」

『はい。ありがとう。マダム』


マダムは入院している人の所へ行ってしまった
まだ朝の早い時間だから目を冷やしながら歩いていても
誰にも会わないから楽だ

その前朝食まで久しぶりに暴れ柳さんの所に行ってみることにした

『暴れ柳さん、』

“おや、君はいつぞやの”

『優季です』

“優季か、今日も乗りに来たのか?”

枝をかさかさと振るわせる

『そういうわけでもないんだけど…
でも乗せてくれるんだったらぜひお願いしたいわ』

“本当に不思議な娘よ、”

そういって暴れ柳さんは私に枝を絡ませ
太い枝の端に座らせた

『ありがとう。……やっぱりここはすごく綺麗…』

“今は冬故、花はないが雪が積もればそれもまた美しいぞ”

『素敵…、見てみたいなぁ』

枝に寄り添っていれば向こうから二羽の梟が飛んできた

『アール!グレイちゃん!』

“おはよう優季、どうしたの?目が腫れてる”

『うん、ちょっとね』

“グレイ、お前のご主人に優季は虐められたんだぞ!”

“セブルスに…?”

“あぁ、お前のご主人が優季を泣かせたんだ!”

『アール、やめて!セブルスは悪くない。
ごめんねグレイちゃん。
私がセブルスを怒らせちゃったから…』

グレイちゃんを撫でれば隣でまだ威嚇をするアール

“彼ね、昨日すごくショックな顔をして
帰ってきたのよ。
今朝も早くに起き出して何処かへ向かったわ”

『そ、う……』

“何があったかはわからないけれど
泣かないで、優季。
私あなたの泣いている顔は見たくないわ”

“俺もだぞ優季!”

二羽が肩に乗ってきて少しだけ重かったが
その気遣いがとてもうれしかった

“優季よ、泣くな。
泣くなら笑え。笑っていれば
どんなことでも乗り越えていける”

そういって優しく枝を揺らした

『………う、ん、!…ありがとう、皆!』

“また何かあったら来るといい。”

『うん!』


暴れ柳さんはまた枝を体に巻き付け優しく
下に下ろしてくれた


そこから私は急いでもう目を覚ましているはずの
友人たちのいる所へ走った




















(辛くても笑っていよう)


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bkm
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