記憶と疑問


また夢を見た
前に見た夢と全く同じ
ただ一つ違うのは声が鮮明に
はっきり聞こえたこと

私は押し倒されて
頭や身体に拳を落とされる
口からでた言葉は

『い…たい、よ。…お父、さん!!』

一度も呼んだことのないお父さん
という言葉だった
お父さんの目は濁り私を映してはいなかった
何かに怯えたかのような瞳

小さな私はただ堪えることしかできなくて
お母さんに助けを求めて叫んだ

『おか、さん、たすけ…て!』

時々吐き気を伴いながらも必死に叫ぶ
お母さんが後ろの扉から入ってきて
私にこう叫ぶ

「うるさいのよ!いい加減にして!!
あんたなんか生まなきゃよかった!!!」

生まなきゃよかった
その言葉を聞いたときに
私は目を覚ました
そして全てを思い出した

私は本当は生まれてきちゃいけない子だった
愛されてはならない子だった

身体が震えて上手く息ができない
どうしようもなくなって
ようやくの思いで隣のセブルスの部屋のドアを叩いた

コン…コン
叩いたが聞こえるか聞こえないか
わからないようなもの

『…ルス……。セブルス…っ!!』

「どうした!?」

と扉が開いた
私はもう震えで上手く立てなくなっていた
セブルスが受け止めてくれなかったら
倒れていただろう
息も絶え絶えに彼にしがみつく

『わ、私、は…生まれちゃ、いけな、い子…だった…っ!!!』

涙で前が見えなくなった時セブルスに抱きしめられた
いつもなら嬉しい温もりがこの時はなぜか嫌悪感を抱いた

『いやっ、離して!』
彼の腕の中で暴れる

「…落ち着け、優季!夢を見たんだ!」

『違う!夢じゃない!私は望まれて生まれたわけじゃなかった!
生きていちゃいけないのよ!』

コントロールできない理性と記憶の中
また彼の力が強くなった気がした

「我輩はお前を愛して、」

『嘘よ!皆嘘つきよ!だって私は愛されない子だも』

その瞬間セブルスがキスをしてきた
暴れたが手と身体をドアに押さえられ
深く深く口づけられた
彼の冷たいの舌がひどく心地良かった

もう息が続かないとまた抵抗をするが
彼は唇を離してはくれない
唇を離さないまま私は意識を失った


「…誰が愛されてはいけない、だ。
お前は今たくさん人々から愛をもらっているだろうが。」

意識のない彼女にぽつりと呟く
彼女をベッドに寝かせると
ホットミルクでも起きたら飲ませようと思いキッチンへ向かった
















私が目を覚ますと目の前には薄い隈のあるセブルスがいた

「優季。大丈夫か、」

『セブルス、私……』

「あぁ、ひどい乱れようだった。
ただの夢ではなかったのだろう?」

彼には何でもお見通しみたいだ
とりあえず飲めと暖かいミルクを持ってきてくれた
少し飲めばちょっとだけ気持ちが落ち着いた

『夢、でね。
お父さんが私に手をあげるの…。
そこで、ね。お母さんが来て…』

また涙が溢れる
ふわりと抱きしめられる

「我輩はここにいる。だからゆっくり、
ゆっくりでいい。話せ。」

時々涙を拭ってくれるセブルス
その優しい手を握りながら私は夢でみた現実を話した



「そうか、虐待を…」

『お母さんとお父さんは私を望んでいたわけじゃなかった。
愛されてなかったみたいです、私…』

「それは違う、優季。よく聞け。
お前の父上と母上が愛し合って生まれたのがお前だ。
だから愛されなかったなんてことはないのだ。」

現にお前は今校長やルームメイトから
愛されているではないか。
愛されていなくても我輩はお前を愛している

と言われれば心が軽くなった

『私は、生まれてきても、よかったんですか?』

「馬鹿者、当たり前だ。
そうでなければ今お前と会うことすら
叶わなかったのだからな。」

そういって彼はまた力強く抱きしめてくれた
少し痛かったけど生きてるんだなって感じがした






















(私は生きて愛されている)


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