涙姫と優形王子


はっと気がつくと梟小屋に私はいた
私、授業をさぼって…

そんなことが頭をよぎったが
今はどうでもよく感じられた

何故かまた涙が溢れた
その時聞き慣れた二羽の鳴き声
アールとグレイちゃんだった

“優季?泣いてるの?”

“そうだぞ、どうしたんだよ”

そっと私に寄り添ってくれる
二羽をぎゅっと抱きしめる

『なんでも、ないの。
ちょっと疲れているだけだから大丈夫』

そういって二羽を離す

“…話ならいつでも聞くわ”

小さく優しい鳴き声と共に
グレイちゃんは何処かへ飛んでいった

“優季、俺にだって話してくれな。
俺はお前のだ。だから…。待ってるからな”

そういってアールもグレイちゃんの後を追った


二羽が見えなくなるとまた涙が
せきを切ったように溢れ出す

『…っ、……どうして?』

どうしてだろう
そんなことばかり頭に浮かぶ
思い返したくないあの言葉
だけど頭の中で反復され続ける
その場にうずくまれば上から声がした


「どうしたんだい?体調が優れないとか?」

はっ、と顔を上げれば目の前には
端正な顔立ちの男の子
優しそうな雰囲気がたった一言でわかった

「泣いてるのか、どうしたんだい?
グリフィンドールのお姫様」

『っ…えと、』

「僕はハッフルパフのセドリック・ディゴリー。
六年生でクディッチのシーカーを
してるんだけど…ってまだ知らないか」

入ったばかりだからねと笑う彼につられて
私も笑った

涙を拭って彼に目を向ける

『グリフィンドールの四年生で
優季桜葉です』

ぺこりと頭を下げればよろしくと
手を伸ばされ私はそれを受け入れた

「優季、悲しい時には一番良い場所に
連れていってあげるよ」

『え?』

「っと、その前に。可愛い顔が台なしだ」

ディゴリー先輩は私に向けて何かの呪文を唱えた
するとまぶたが軽くなりすっと赤みがとれた

『えと、ありがとうございます。
ディゴリー先輩』

「ディゴリー先輩だなんて堅苦しいよ。
セドリックとかセドって皆呼ぶから
優季にもそう呼んで欲しいな。」

頼むよなんて言われたら断れない

『セドリック…さん、』

「さんは取ってよ」

クスクス笑っている彼はこの状況を
楽しんでいるみたい

『セドリック……!』

よく出来ましたと頭を撫でられ
手を引かれて向かった場所は塔の一番上
景色が雄大でとても綺麗な場所


「よしっ!ここなら人目をはばからず泣けるだろう?」

『……なんで…?』

どうしてこの人には気持ちがすらすらと
伝わってしまうんだろう
つくづく疑問に思った

「泣いていた子を放っておけるほど
僕は落ちぶれてないよ?
ここはよく僕も使うしね」

遠くを見ながらそう呟く彼を
私はじっとみた

『セド。ありがとう。』

私は景色を見ながら泣いた
セドリックはただ隣にいてくれた




だいぶ時間がたったのか
景色が変わっていた

「…落ち着いたかい?」

『うん…ありがとう!』

「よかった。やっぱり君には笑顔が似合う」

その言葉に少しだけドキッとした私がいた

「あ、もう夕食の時間だね。食べに行く?」

『うん!いっぱい泣いたらお腹へっちゃった』

「じゃあ行こう」


彼は私の手を握って大広間へと足を進めた
セドリックの手は暖かくて
すごくほっとした
まるで彼の心が伝わってくるみたい


大広間の扉の前でふいに立ち止まると
私に合わせて少し腰を折り向き直った

「いいかい優季。仲直りは早い方がいい
だから席に言ったらまずは謝るんだ。
自分が悪くなくても
喧嘩は謝った方が勝ちなんだよ」

そう諭すようなセドリックの目は
優しい色をしていた

『うん。わかった。謝るよ』

「いい子だ!」

髪をくしゃくしゃっと撫で
扉を開けてそれぞれの寮のテーブルに別れるまで
彼は手を握っていてくれた

「優季!こっちよ!」

とハーマイオニーが私を呼ぶ
思わずセドリックの方をむけば

が ん ば れ

と声に出さずに応援してくれた
セドリックにうんと頷きハーマイオニーの方へ歩きだした













(私はみんな仲良しでいたいの)


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bkm
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