優しさで紡いで


コツコツ、と歩く音だけが聞こえる
前を行く全身黒ずくめの人は誰なのだろうか
さっきは言葉が通じるようにしてくれた

悪い人ではないのかな…
優季は前を行く彼のことを考えながら歩いていく

ふと彼が立ち止まったと思えば
像に向かい

「レモンキャンディー」

といえば螺旋階段が現れた

この無愛想な人が甘いお菓子の名前を言ったことと
階段が現れたことに驚いていると
おい、と声をかけられた

早くしろということだろう
階段を上りきると大きい扉
彼が数回ノックをする

「ダンブルドア校長、ご報告したいことがありまして。」

「セブルスか。お入り。」

年老いた老人の声がしてドアが開かれると
そこには長く真っ白な髭を備えた老人がいた

「校長、この者が暴れ柳の上で眠っておりましてな。
それだけでなくホグワーツの生徒ではないようなのです。」

我輩の知らない言語も喋っていましたしな
と付け加えた

「ほう。あの暴れ柳に…。
お嬢さん怪我はないかね?」

『はい、大丈夫です。』

「おや君は東洋人かな?」

『はい。でも祖母がフランス人なのでクオーターです。』

「そうかね。綺麗な髪の色じゃなと思ったんじゃよ。」

ほっほっと笑うこの人に私もつられて笑った

「でもどうして柳の上で寝ていたのかね?」

『私、気がついたら暴れ柳さんの上にいました。
それと私はこの世界の人間ではない…と思います。』

「これはまた…。詳しく話してくれるかの?」

私はぽつりぽつりと話し始めた
神様に会ったこと、家族の記憶が曖昧なこと
私の特異な能力のこと

今の私に話せること全てを話した
二人は黙って話を聞いていた

全てを話し終えると
校長先生がふむと言って話し始めた

「君は恐らく転生とトリップとの狭間におるんじゃろう。
前にもいたのじゃよ、異世界から来た子がな。
きっと君は転生をしたが存在は前のままなのじゃろうな。」

『そう、かもしれません。
でも私…これからどうしたら。』

本当に困っていたのだ。
身寄りもないしこの世界の人物でもない。
何もわからないし持っていなかった。

「そこでじゃ。君はわしの孫ということで
このホグワーツに入学してはどうじゃろうか」

『でも私…』

「もちろん必要な費用は全部わしがもとう。」

『そんな…いいんでしょうか…。』

「校長がこうおっしゃっているのだ。
有り難く受けてはいかがかな?」

黒ずくめの彼が言う
確かにそれが一番良い方法だろう
この世界で私は右も左もわからない
ただの赤子同然なのだから


『…よろしくお願いします。』

私はぺこりと頭を下げた

「ほっほっほ。そういえば自己紹介がまだじゃったな。
わしはアルバス・ダンブルドアじゃ。
ここホグワーツ魔法学校で校長をしとる。
君の名前も教えてくれるかの?」

『優季です。あ、』

ここは外国圏
思い出した私は言い直す

『優季桜葉です。』

「優季か、良い名前じゃ。」

校長先生は私の頭を撫でた
私は何だか心地好くて目を細めた

「優季、ここではわしのことを
本当の祖父のように思ってくれて構わないからの。
アルバス、とでも呼んでくれればよい。」

にっこりと校長先生は笑ってくれた

私が頷くと

「そうじゃ、彼のことは知っておるのかね?」

彼。あぁ黒い彼のことか。

「彼はセブルス・スネイプ教授じゃ。
魔法薬学の教鞭をとっている。
優季。困ったことがあったら
セブルスを頼るのじゃぞ。
きっとよくしてくれるじゃろう。」

ぱちんとウインクをしてみせる先生に
微笑んでスネイプ教授に向き合った

『ご迷惑をかけてしまうかもしれませんがよろしくお願いします!』

「…ほどほどにしてほしいですがな。」

そういって彼は出ていってしまった

「セブルスはそっけないのー」

気にするなと校長先生は言ってくれた。
はい、と答えると
ドアをノックする音がした

「アルバス、お呼びでしょうか?」

厳格そうな声がした
思わず体が強張る
それに気づいたのか校長先生は
私の肩に手を置いて
大丈夫じゃよ、と言ってくれた

「ミネルバ、待っていたのじゃよ」

「すみません、授業が少々…
あら、そのお嬢さんは誰です?」

「まぁそう急ぐでない。
この子は優季。わしの孫じゃ。
明日からホグワーツ入学をさせる。」

『よろしくお願いします!』

「そうなのですか…。私はミネルバ・マクゴナガルです。
こちらこそよろしくお願い致します。」

「さて、優季は色々あって疲れたじゃろう。
ミネルバ、今日はひとまずグリフィンドールの寮に
寝かせてやってくれんじゃろうか。」

「もちろん歓迎ですわ。
たしかベッドもありましたしね。」

私のわからないことが
着々と進んでいく
でも何故か不安は薄れていた

「では優季。行きましょうか」

『は、はい!』

「おやすみ、優季。いい夢を。」

校長先生が私のおでこにキスをした

『おやすみなさい…おじいちゃん。』

校長先生を軽く抱きしめ
マクゴナガル先生についていった



扉が閉まるのを見届けたダンブルドアが

「おじいちゃんか…悪くないのう。」


といって頬を綻ばせていたのを
優季は知らない











(人の優しさを噛み締めた)


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