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「明朝、将軍閣下自らの手であんたたちの尋問が行われる。そこで無実が証明されれば2、3日で釈放されるはずだ。ま、しばらくそこで頭を冷やしておくことだな」
二名の兵士が連れ立って廊下を去っていく。
それを見送ってから、エステルが大きな溜め息をついた。
「はぁ、冗談じゃないわよ…こちらの言い分も聞かないでこんな場所に放り込んでさ」
空賊の一味と結託し何かを企んでいるとして放り込まれたのは、牢屋。
人並みに真っ当に生きてきたつもりだったが、こんなところに入る日が来るなどと思いもしなかった。
「お腹減った…」
「余裕ねレフ」
「いや、だって昼早かったし、ロレント出てから何も食ってないもん」
冷たい鉄格子のはめられた牢屋は黴臭く、随分と古めかしい作りだった。
ここに何日も軟禁されるなどと考えるだけで寒気がする。
「軍が空賊団を逮捕できれば疑いは晴らせるだろうけど」
だいたい、寝食は兎も角トイレはどうしろというのだろう。
簡易トイレなど見当たらないのだが。
一応、年頃の女子が二名いるのだ。その辺りを配慮していただきたいところだ。
「こうなると無理かもしれないな」
「え、どうして?」
言い掛かりだが状況は最悪だった。
自分たちを疑っているというよりチョロチョロ動き回って余計なことをされたくないのだろう。
あの遊撃士嫌いの分からず屋のオヤ…モルガンがそう易々と釈放してくれるとは思えないが。
「廃坑で戦った空賊リーダーの言葉を覚えているかい?『話が違う』『来るのが早いって』。」
「あー…そう言えばそんなこと言ってたかもな」
ロレントで捕らえ損ねた空賊の一味、ジョゼットと言ったか、彼女の仲間のキールという男の言葉を思い出す。
「まさかそれって軍の部隊のことだったの!?」
「十中八九、そうだと思う。そしてそれが意味するのは…」
「軍内部に空賊のスパイがいる。もしくは情報を流す協力者のような人物がいる…つまり、そういうことね?」
「はい」
ヨシュアの後にシェラザードが続く。
硬い表情で頷いたヨシュアにレフもエステルもごくりと唾を飲み込んだ。
「八方塞がりってやつね。こんな時に、先生だったらどう切り抜けるのかしら」
今はそのカシウスの身の安全も分からず終いなのだ。
流石に今の状況を考えると、シェラザードの言葉も弱音とも取れる。
沈黙は、そう長くは続かなかった。
「フフフ…どうやらお困りのようだね?」
「あれ…ヨシュア、何か言った?」
「いや、僕は何も…」
「じゃレフ?」
「俺じゃない」
「隣から聞こえてきたわ。しかもなんだか聞き覚えのあるような…」
捕まっているのは自分たちだけかと思っていたが、どうやら他にも人がいたらしい。
四人の視線は見えない壁の向こうへと注がれた。
「おお、つれない事を言わないでくれたまえ」
声は確かに此処にいる人物ではなく第三者のものだった。
レフは聞き覚えのない声だったが、どうやら他の三人には覚えがあるようだ。
知り合いなのだろうか。
ボースに着いて早々、顔が広いことだ。
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