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* * *


七耀歴1192年
戦火によって失われし善良なる6つの魂、ここに眠る。
レフ、アベル、ニコル、ヴィム、イレーナ、ミーシャ。
女神の御許にて、どうか安らかに。



* * *




「っ、たー…」

山道を歩くのは初めてのことではないが、好戦的な魔獣に手間取り、村に着くのが予定より随分遅くなってしまった。
レフは擦りむいた肘を擦りながら起き上がる。

――シェラザードならさっきそこですれ違った。
確かに生意気そうなガキ二人つれてたな。

アガットの言った生意気そうなガキとは言わずもがなエステルとヨシュアのことなのだが。
あの男に言われるのはエステルも心外だろう。
相手に隠しもせず嫌な顔をするエステルが容易に想像できる。

「やっと着いたー…とりあえず村長さんのとこ行くか」

思ったより広い果樹園。そして湖。
果樹園で仕事をする人たちは楽しそうに手を動かしていた。
伸びた桟橋では子供が遊んでいる。

それにしても長閑な村だ。
果実の甘い匂いが鼻をくすぐる。


「遊撃士の三人なら、ラヴェンヌ鉱山のほうへ調べものじゃ」

レフを目にし、また若いのが来たと驚いてはいたが村長は快く応対してくれた。
聞けば三人はここでの目撃証言を元に調査に向かったようだ。
調査が順調に進んでいるらしいことに少しだけ安堵する。

「今からなら追いつくとは思うがの。彼らに退治してはもらったが、大きな魔獣が出たばかりだから気を付けて行きなさい」

人の良い村長と夫人に礼を言って家を出る。
村に着いたころには穏やかだった風が少し強くなっていた。
ざ、っと音をたてて、レフの髪が風に舞う。
毛先が目に入り、咄嗟に目をこすった。

――……。

「…ん?」

ふと手を止める。
子供の笑い声だ。
同時に、どこからともなく小刻みな足音がした。
振り返れば丘の方へ子供が走って行くのが見える。
子供の走っていった方向へ少し歩くと、墓地へ出た。

先ほどの子供はいない。
どうやら見失ったらしい。

中でも立派に建てられたものが一つ、一際目立っている。
御前には仏花が添えられていた。

「ああ、あのときの…」

ボース地方は帝国に近い。
この辺りは戦火に巻き込まれ、犠牲になった者は多いと聞聞く。
アガットの生まれ育った、この村も。

「…」

ザワザワと風が謳う。
静かに手を合わせてから、レフは墓から背を向け廃坑へ急いだ。



* * *




「…で、何でこんなことになっちゃったんだっけ?」
「知らないわよ。あの融通聞かない分からず屋オヤジのせい」
「エステル、オヤジとか言わないの」
「それ以外は否定しないんだねヨシュア君」
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