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「ああ、待ちなさい」
「え?」
「レフ君と言ったか。敬語も無理して使うこともないから、少し儂のお喋りに付き合ってくれんかの」

数歩歩いたところでルグランに呼び止められ、レフは足を止める。

ルグランがレフを呼び止めたのは、単純に彼と話がしたかったからだった。
控え目な性格のようで、抑えられたオーラは悪くない。
戦闘能力は別として、遊撃士としての素質は十分にある。
少しの間にしろ、あの「重剣」が同行を認めた若い遊撃士に興味があった。
何か惹かれるものすら感じたのもある。

「その正遊撃士じゃが…燃えるような赤毛に、大きな大剣を担いでいたじゃろ」
「爺さんアガットのこと知ってんの」
「よく知っているとも。奴はラヴェンヌ村の生まれだからの」

ラヴェンヌ村。
此処ボースから少し離れた場所にある村だ。
村には広い果樹園があり、その出荷数はかなりのもので、青果は勿論、醸造酒など多種多様な加工品にされ外国市場にも出回っている。

「ラヴェンヌ……あ。、ってことは野暮用っていうのは…」

里帰りってことか?
レフの言葉にルグランが頷く。

「ああ。少し事情があってのう…他の奴らから聞いたが、…そうか、まだ一人でいるのか…」

ルグランは大きな溜息をついた。
自分の子のように心配しているのだろう。
その表情から彼への愛情が見て取れる。
今日初めて会った相手ということもあり、レフにアガットの抱える事情などは知らない。
だが、少しの間行動を共にした限りで、彼もまた優秀な遊撃士であることは十分に理解していた。

「なんかいい加減だしふてぶてしい奴だったけど、他人の気がしないよ」
「そうかそうか…お前さんええ子じゃの」
「ええ子って、いや、じーさん」

思えば自分にも色々と助言してくれていた。
面倒見は悪い方ではないと思う。

他人の気がしない、というのは自分の家に勝手に上がり込むあの犬とよく似ているからだ。
もしも彼が言葉を話すなら、アガットと同じように悪態をつき、あの調子で振る舞うのだろう。
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