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アガットは遊撃士手帳に何行か書きなぐると手帳の一部を破り始める。
何してんだ、レフは唖然として凝視した。
遊撃士手帳は腕章以上に再発行が面倒だと聞く。
盗難は聞いたことはないが、破損、紛失した場合、講義やら書類やら、何かと手続きが七面倒臭いらしい。
正遊撃士がこんな大雑把でいいのだろうか。

「おら。書いといてやったから、提出しやがれ」

呆気に取られているレフの目の前に、彼は破った1枚を突き出してきた。

「ならアンタが行ったほうがいいんじゃないの。俺の要領得ない説明じゃ…」

紙切れを受け取ったはいいが、正直従っていいものか判断しかねる。

「いいから、お前一人で行ってこい。俺はボースに長居する気はねえ。野暮用があるから寄ったんだ。他のことは知らねえ」

終いには 知らねえ、ときた。
正遊撃士が自分の請け負った仕事を後輩に押し付けて、あまつさえ私用を片付けに行くから忙しいと抜かしている。
こんな適当でいいのか。

「はぁ、わかったよ」
「お前の管轄じゃねえから、ガキ共は保護者が来るまでギルドで預かっといたほうがいい。後々また迷子騒ぎになったら面倒だからな。じゃあ俺は行くぜ、クソガキ共」

挨拶までぞんざいに済ませ、赤毛はレフ達に背を向けた。
そのまま西街区へと消えていく。

「やばんなおとこだったわね」
「それよりさあアリス、このふくいつまできてなきゃいけないわけ?おれもうつかれたんだけど」
「にあってるわよルイス」

言われた通り、市内へ入りギルドを目指す。
見慣れた看板が目に入った後は安堵の溜め息が漏れた。

「それにしても…何だったんだ、あのアガットって奴」

彼は野暮用で忙しいと言っていた。
その割に色々と指示というか助言を出してくるぐらいなのだから自分で済ませたほうが早かったのでは?
そこまでギルドに寄りたくない理由でもあるのだろうか。
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