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turn right!

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見上げた先に巨大な魔獣の両腕。
先程の片腕での攻撃と比べると恐らく速度も効果も二倍。

「……!」

右手でオーブメントを支えた格好のまま瞬きも出来ずに膝をつく。
目だけで後ろを確認すれば子供達が草陰で大人しくしているのが見えた。
狙いは自分だけだ。
少しだけ安堵した。
けれど次にどうしたら良いのかが解らない。

恐怖を通り越した状況で、脳からの指令は完全に途絶えてしまった。
逃げなければ。それはわかっているのに体が動かない。
立ち上がるという動作すら、思いつかない。

「馬鹿野郎、ぼさっとすんな!」

怒号と共に、赤い影がレフの目の前に降り立った。
レフたちの周りに白くて鋭利なものが円を作って突き刺さる。

それが獣の爪と気づくまでに少々時間は要したが、何が起きたかは理解できた。
指一本も動かせないレフの身体を片腕で後ろへ押し返した後は、背に掲げた大剣を構え直す。

「っとに世話のかかる…」
「…っ……」
「先が思いやられるな」

「ゴォアアア!」

逆上した獣の咆吼が耳を裂く。
そのままレフは、その巨大が赤毛の大剣によってなぎ倒されるのを、ただ呆然と見守ることしかできなかった。



「おにーさん」
「だいじょうぶ?」

氷結した地面がパリパリと音を立てる。
漸く起き上がることができたのは、全てが終わり、双子の姉弟が駆け寄ってきてからだった。

「腰抜かしたのか。だらしねえな」

アガットは至極面倒臭そうに呟く。
違う。レフは短く噛みついた。

「こいつの声、きこえなかった」
「あ?」
「魔獣の声だよ。いつもは聞こえるのに。感情が雪崩れ込んでくるみたいに」

声と言い切るには語弊があるかもしれないが。
獣には肌で感じ取れる様々な声がある。
レフに聞こえるのは、その「声」だ。
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