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戦闘はまだ不慣れだ。
遊撃士は人を守るのが仕事だし、討伐の依頼は何度かこなしては来たが、動物を傷つけるのも自分が怪我をするのも本当は嫌いだった。

魔獣の咆吼を耳にしただけで足が竦んでいる。
完全に「ビビっている」レフの様子に赤毛は「仕方ねぇか」と溜め息を着く。

子犬のように耳を垂れ尻尾を巻いて震えている後輩。
子供二人よりもガキだなと思うと自然に口元が緩んだ。
面倒臭いことこの上ない今の状況に若干の楽しみすら感じる。
それは、先ほどまでとは違う何か別のもの。

「白くて、やたら馬鹿デカい長毛のゴリラみてぇな奴だ。歩くだけで地響きが聞こえるから直ぐわかる」
「あ、もしかしてああいう奴?」
「まぁ、そうだ。つーかあれがジャイアントフットだな」

レフの指差す対象。「あれ」とは、雪のように白い毛に覆われた大型の魔獣だった。
霧降り峡谷の魔獣・ジャイアントフット。
「ぐるるるるる」威嚇するように後ろ足を地面に叩きつけ、此方を睨みつけている。

「へー。初めて見た……って、え¨?
「気をつけろ。動揺すれば相手もそれを感じ取って襲ってくる」
「動揺しまくりだよ!どうすりゃいいんだよ…!」

魔獣は太い両腕を震わせながら荒い呼吸を繰り返している。

「ギャァー本物!」今すぐダッシュで引き返してロレントに帰りたい気持ちを押さえ込み、心の中で絶叫をあげながらレフは両脇のアリスとルイスを自分の背に隠した。
それから平然としているアガットの背後に回る。
冗談じゃない。流石にまだ死にたくは無いから。

「あー。ごりら」
「らくだ!」
「だいこん……おわっちゃった…」
「ばかねぇルイス。だるまとかだざいおさむとかあるじゃない」
「いや、お前ら余裕だな」

魔獣を指差して喜んでいるルイスに続き、アリスがしりとり遊びを始める。

「がちん!」三秒で決着の付いたそれに突っ込むも、アガットの大剣と振り下ろされた魔獣の爪がぶち当たる音にはっと我に返った。
目の前の敵はやはり「かわいい」ものではなかった。

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