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「ごめんな。きむらたくやちゃ…くん、だね…何歳かな?」
「さ、さっきからなんなんだよ、いいよ、べつにもう…ほんとのなまえはアリス!6さいっ」

少年改め少女は未だ納得のいかない顔で乱暴にフードと羽織っていたローブを脱ぎ捨てる。
ブロンドの髪がぱさりと肩に落ちた。
金糸の髪には紺のカチューシャに結ばれた赤いリボンがよく映える。
帽子に隠れていてわからなかったが、とても綺麗な髪をしていた。
童話のアリスさながらの容姿にその名への納得がいく。

「本名は…アリス、と」

一瞬面喰ったが、素直になってくれたのは好都合だ。
詳細を手帳に書き足し、レフはアストンが頷くのを見てから少女に向き直る。

「アリス、なんで男の子だって言ってたんだ?」
「な、なんでもいいでしょ。きょうはルイスもおそろいのひなの」

アリスは つんとそっぽを向いた。
それから先程まで被っていた帽子を人差し指に引っ掛けると、くるくる回し始める。
伏し目がちの新緑の瞳。
ふと違和感を覚えたがそれよりも彼女の口にした名前のことを聞くほうが先だ。

「ルイスって誰?」
「おとうとだよ。おなじふくきてる。どっかにかくれてるんじゃない?」
「そう…」

紺のカチューシャ。薄青のワンピース。
童話のアリスそのものの彼女は、つまらなそうに溜息をつく。

「も、もう一人いるのかい?さっきはそんな話…」
「おじさん、おれのはなしちゃんときいてなかっただろ」
「ご…ごめんな…」
「ふん」

聞けば少女の家はボースの西街区にあり、今日は姉弟だけで遊びに来ていたようだ。
子供が一人でいたからだろうが、彼女は迷子というわけではないらしい。
むすっとしていたのはそのせいもあるのだろう。

「…?」

レフはカチューシャに結ばれた緑のリボンに眉を寄せる。
もう一度、少女の顔をまじまじと見て漸く合点がいった。
先ほどはなかったはずの目元のほくろ、色の違う瞳。
「ああ、そういうことか」違和感の正体が判った。

レフは小さく息を吐いて手帳を閉じる。
全く、人騒がせな「子供達」だ。

「わかりました。この件は此方で引き受けますので、アストンさんは仕事に戻ってください」

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