TOP
turn right!

page list
______12

ミルヒ街道にはティオの実家・パーゼル農園がある。
害虫駆除は別の遊撃士に任せてヴェルデ橋へ向かうことになった。
好戦的な魔獣が徘徊してはいるが、NPCを連れた状態で戦う必要はない。
避けて通ればいいだけの話だ。
レフは「男の子」の外見や服装をメモしてからギルドを出た。


* * *


「えーと…わた、じゃない。ボクのお名前は?」
「…キムラタクヤ」
「…リーダーは?」
「ナカイマサヒロ」
「うーん…」

アストン隊長の執務室で待っていたのは、某有名俳優の名前を語る少年(どうみても少女)だった。
やたらとエステルに突っかかってくる少年・ルックの父親でもあるアストンにはレフも世話になったことがあるため、引き継ぎは問題なく行うことができた…のだが。

「ええと…本当のお名前を教えてくれないかな?」
「じゃあジョニーデップ」
「いや、無理あるから…つーか激しく飛んだな」
「いいともつながり」
「…閲覧者さんにわかりやすいネタ持ってこようよ、お嬢ちゃん」

困ったな。レフは額に変な汗が滲んでいくのを感じた。
難しい年頃の子供が真面な回答を寄越さないのは予想の範疇ではある。
けれどご両親を探そうにも名前が判らないことには相当厄介だ。
外見だけの情報では心許なすぎる。

ああ、ここに子供うけのするエステルがいてくれれば…
嘆いても始まらないが、切にそう思った。

「私も聞いたんだが、キムラタクヤの一点張りでね」

レフの後ろでアストンが小さくため息をついた。
此方をからかって遊んでいるようには見えないが、名前を言いたくない理由があるのだろうか。

「おにーさんもおれがうそついてるっていうんだ?おとなってみんないっしょだよな」
「あ…」

子供のむすっとした顔に影が落ちる。
紺のハーフパンツの裾を握りしめ、拳を震わせている。

「…わかった。君を信じるよ」

レフは子供の視線に合わせるように屈み、軽く頭に手を乗せた。
それから、数回撫でてやる。
唇を噛み、レフを捉えた青い瞳が揺れた。
26/52

  
しおり

TOP

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -