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書類に目を通しながら、アイナは労いの言葉をかけてやる。
「抜けた穴は塞がないといけないから」
「いい心掛けね」
兄弟同然に育った二人がいない状況で小さくなっているかと思えば、立派に依頼をこなしているのを見て少し驚いた。
二人は勿論シェラザードも心配していたようだったが、大丈夫そうだとアイナは口元を歪める。
「あら、怪我してるじゃない」
「飛猫に引っかかれたんだよ」
「可愛いからって撫でようとしたんでしょう。魔獣は魔獣よ。あまり危険なことはしないで」
「ヘェイ」
それにしても、見習いにしてはよく働いている。
レフの戦闘方法はグローブで強化した拳で対象の関節に打撃を叩き込むのが基本。
東方の武術にも似たようなものがあるが、それとは似て非なるものだ。
ただ対象を痛めつけるのではなく鎮静させ、戦意を喪失させる効果がある。
だがアーツの扱いに関してはまだまだ上手いとは言えない状態だった。
それでも、猛毒を放つ魔獣相手に間合いを取らずに戦えるのはそう簡単なことではない。
「で、そっちの要件は?」
「ああ、そうそう。ずっと市内だと退屈になるだろうと思って、市外の依頼をやってもらいたいの」
レフの言葉に、アイナは顔を上げた。
依頼の完了したものに判を押し、レフに手帳を返してやる。
「ヴェルデ橋のほうまで行ってきてもらえない?迷子がいるんですって。食堂で預かってるみたいだけど、手が空いてなくて困ってるらしいわ」
関所の橋からギルドまでは距離がある。
要人が民間人だからというのもあるが兵士に子守までする余裕は無いためギルドへ要請があったらしい。
「子供をギルドに連れてくればいいの?あ、性別は?」
「女の子……なんだけど、本人は男だって言い張ってるみたいだから男の子ってことにしておいて」
苦笑するアイナにレフもそれ以上聞くのはやめた。
迷子は迷子。兎に角ギルドまで無事に送り届ければいいのだ。
「あーなんかよくわかんないけど解った。じゃあ行ってきます」
「ええ頼んだわ。魔獣に気をつけてね。関所付近は大型のものもいるから」
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