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「ダメ。これはやらない。お前梅干し以外全部食うんだから…」
「ガルルル」
「散らかしたゴミ、自分で片付けんなら考えてやってもいいけどな」
「…フン」

テレビ脇の壁に立てかけた折り畳み式の小さなテーブルを引き寄せ、組み立てる。
そのまま背を向けて弁当を広げたレフに分ける気が全く無いのを感じ取ったのか、犬はカーペットから起き上がり鼻と前足で窓を押し上げた。

「俺…窓の鍵閉めなかったっけ」

いつもそうやって入ってくるのかと感心したがふと思い出す。
玄関は勿論、窓も侵入を防ぐために鍵をかけたはずだった。

「おいお前、」
「………クゥーン」

ばーか。
馬鹿にした顔で振り返る犬にイラッとして睨み返す。
が、彼はもう窓の下へ飛び降りた後だった。


訪問者(というか侵入者)に面喰らいはしたが、早めの昼食を取る。
朝食を食べてからそれほど時間は経っていないのだが、何となく食が進まなくて胃はスカスカだった。
適当に済ませて先程犬が寝そべっていたカーペットを掃除する。
思えばあの犬には振り回されてばかりだ。
あの不貞不貞しい態度では懐いているとは到底考えられない。
気まぐれに来ては散らかして、レフを挑発しているともとれる。
数年前、怪我をしてボロボロだった彼を暫く手元に置いていた。その頃はまだ彼も子犬だったし、可愛いものだった。
野生に返したあとは会うこともないと思っていた。
けれど数ヶ月前、また怪我をして倒れている所を発見した。
そのときは応急処置だけ施してやったのだが、暫く経って恩返しに来たかと思えばそれからふらりとやってきてはあの態度で飯を集りに来るのだ。

振り回される、と言えば。

「エステル…ヨシュア……シェラに振り回されないか心配だな…」

あの酒豪の酒癖の悪さは折り紙付きだ。
それは兎も角として、レフだってカシウスの安否が気になって仕方が無い。
何かしていないと、考えても仕方の無いことばかり考えてしまう。

「とりあえず、ギルド行くか…」

レフはローラー式の掃除用具を転がしていた手を止め、片付けて立ち上がった。
ハンガーにかけた戦闘用の服装に、革のグローブを嵌める。
踵に細工を施した靴を履き、ドアを開けると、外で近所の子供達が走り回る声が聞こえてきた。
ロレントはいつも通り。
皆が良く知る三人の遊撃士が居ない状況でも、変わらぬ姿で街はあった。
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