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街道を歩いて向かうと意気込みボースへ発った三人を見送った後は、半ば放心状態で家に帰った。
何だろう。この感覚は。
胸に小さな穴が空いたみたいだ。
いつも両脇にいた、家族同然に育った二人が今はいない。
漠然とした寂しさに押しつぶされそうだ。
当然のように自分をメンバーに入れているエステルの言葉は本当に嬉しかった。
自分を無条件に受け入れてくれる二人がたまらなく愛しくて、本当は一緒に行きたかった。
けれど。無理について行ったところで、己に何が出来る?
弁えているつもりだ。
自分は、正しい選択をしたのだ。
そう無理に結論づけて、思考をストップさせる。
今やるべきことは、三人がカシウスを連れ帰る場所・ロレントを守るために出来ることをするだけだ。
それでも虚無感に#似た感覚は抜ける気配がない。
レフは何となく重い足取りで帰路につく。
「なんだこれ?きったねぇ」
アパートの前の階段には、食い散らかした骨やら魚の尾やらが転がっていた。
足で数回蹴り、端に退ける。
「野良猫かカラスか…」
野良……?
そこまで考えて、思考停止していた脳が一気に回り始める。
まさか。
階段を駆け上がり、一室のドアを開けた。
「……!」
予感的中。全く嬉しくない。
誰もいないはずの部屋には、赤毛の獣がベッド下のカーペットに我が物顔で寝そべっていた。
「ふぁ……ぐるるる」
アパートの外の残飯は奴の仕業だろう。
また管理人に睨まれる。
彼はレフの帰りを待っていたらしい。
無愛想な顔でレフを見ると「フン」鼻を鳴らし、後ろ足で耳を掻いた。
「メシはまだかよ」
そう言われたような気がしたが、恐らく間違いではない。
視線が注がれるのは、レフの手にある袋。
その中身がHotta Mottaロレント店の弁当だと知っているのだ。
勿論、タマネギが入っていないことも。
無意識にそういう選択をしている自分がたまらなく嫌だ。
この犬にやることを前提としているようで。
このアパートは基本的にペットは禁止だ。飼ってもいないのにまた管理人に怒られるのは我慢ならない。
「お前、また勝手に入ったのか」
「グルル」
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