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「それと旅行用具一式。どれだけかかるか判らないし、備えあれば憂いなしってやつよ」
「あ…」

続いたその言葉に、ヨシュアが口を動かすのが一瞬止まった。
尚も押し込んでくるレフの手を押しのけ、飲み込む。

「あんた、もしかして…先生の消息を確かめるためにボースに行ってみるつもり?」
「モチのロンよ。あの悪運の強い父さんに何があったとは思えないけど…」

じっとしているのは性分ではない。
シェラザードに頷き、エステルは最後の一匙を掬うと口へと流し込んだ。

「はは…まったく…君って子は」
「前向きっていうか、神経が図太いっていうか…」

ヨシュアとレフもシェラザードと同じ顔で同時に溜息をつく。
言い出したらきかない彼女のことだ。
止めても行くだろう。
そんな野暮なことはしようとは思わないが。

「なによ〜失礼しちゃうわね。どうせヨシュアも付き合ってくれるんでしょ?」
「当たり前だよ」

頷いたヨシュアに、エステルも微笑む。
それからパンを頭から齧るレフの首に腕を回した。

「レフも、来てくれるよね?」

期待の籠った、というか確信に満ちた表情で詰め寄られる。
レフは一瞬目を丸くして、照れ笑い交じりに首を振った。

「…レフ?」

レフが首を振ったのを見て、エステルの瞳が大きく瞬く。
頷いてしまいそうになるのを踏みとどまったのは、後ろでなんとも言えない複雑な顔をしているヨシュアが見えたからだった。
どんな形であれ彼女が自分を必要としてくれているのは喜ばしいことだけれど、「家族」の問題に首を突っ込むのは、やはり気が引ける。
自分はまだ準遊撃士として認められただけの存在で、彼らとは違うから。

「俺はついていかない。ここにいるよ」
「え?」
「レフ」

戸惑いがちに何か言おうとするヨシュア。
何で何で、と口には出さなくてもエステルの視線が痛い。
レフは仕様がない姉弟だと困ったように笑った。

「叔父さんのことは心配だけど。俺がついてったところで邪魔になるだけだ」
「レフ…あんたは本当にそれでいいの?」

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テーマ「人外ファンタジー」
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