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「有り得ない事が起きた…つまり、そういう事ですよね」
ヨシュアは組んでいた指をはなす。
それから、レフに向き直った。
「レフはどう思う?父さんのこと」
「同姓同名同年齢同支部……とか」
「ロレント支部にカシウス・ブライトは一人しかいないよ」
それこそ有りえない。
レフの言葉にヨシュアは苦笑交じりに返した。
信じたくない気持ちがわからないわけじゃない。
「でも納得いかないよ」
「それは、僕だって…」
自分だって混乱している。
あの父が、と。ただ信じられない。
「ふふ、そういう顔しなさんな。あんたたちはどっしり構えてエステルを支えてやんなさい。明日、あたしの方で動いて……」
「はぁ〜、いい匂い〜っ。もう我慢の限界だよ〜」
二階から降りてきた声に三人が振り返る。
エステルは、いつもどおりの彼女に戻っていた。
「えっ…?」
「エステル」
「あんた、大丈夫なの?」
「もーダメダメ。お腹空いて倒れる寸前だよ」
「あ、いやその大丈夫かじゃなくて…」
「んー?何が?うわ、美味しそーじゃん!いっただきまーす!」
レフの突っ込みに曖昧に返事をしながら、エステルはスプーンを取った。
一匙掬って口へ入れる。
一口、二口。やせ我慢ではない顔に、レフは安堵のため息をついた。
「あれ、みんな食べないの?美味しいよ、スープグラタン。オニオンの甘みが利いてて。さっすがヨシュア、いい仕事してるじゃない」
「そ、そりゃどうも」
面喰うヨシュアの肩に軽く手を添え、レフはにっこり笑う。
「レフ…」
「もう、大丈夫みたいだよ。ヨシュア」
「でも」
「エステル、俺も手伝ったんだよ」
「えーレフが?」
言いかけるヨシュアを遮って、レフは椅子を引き座り直した。
「…怪しいなぁ。隠し味に変なものいれなかった?」
口に入れかけたスプーンを持ち上げ、まじまじと見つめるエステル。
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