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それは突然にやってきた。
「エステル、ヨシュア。気をしっかりもってちょうだい。
…行方不明になった定期船にカシウスさんが乗っていたらしいの」
準遊撃士の資格を得た三人が、仕事でまた留守にしたカシウスの代わりを務める中 起きた事件。
女王陛下へ献上するはずのセプチウムをカプア空賊団から奪還したまでは良かったのだが、すんでのところで賊を取り逃してしまった。
三人とも正遊撃士になる為の推薦状(ロレント支部)を受け取り、喜びも束の間のことだった。
エステルとヨシュアの父親であるカシウス・ブライトが定期船と共に行方不明になったとの知らせを受けたのだ。
優秀な遊撃士であるカシウスの謎の失踪。
俄に信じがたい事態に一同唖然とするも、何の情報も無い中憶測で考えても何の答えも出てこない。
その夜。
シェラザードとレフは二人に付き添い、ブライト家に泊まることになった。
「あら、エステルはどうしたの」
「呼んだんだけど…」
「先に食べてくれって。あまり食欲が無いみたいです」
夕食の準備が済み、ヨシュアとレフは2階までエステルを呼びに行ったが、彼女は部屋に籠もって出て来ない。ヨシュアに連れ立って1階へ足を進めながら、レフは心配そうに2階を振り返る。
「そっか……さすがにあの元気娘も今回ばかりは応えたみたいね」
「……無理、ないですよ。なんだかんだ言って仲のいい父娘ですから……」
「そうね……」
「エステル大丈夫かな」
ハーブの良い香りが立ち込める食卓。
食欲のそそる匂いに普段のエステルなら飛んでくるはずなのに、賑やかであるはずの此処は妙に静かだ。
「……」
三人とも、席に座って黙り込んだ。
考えることはカシウスの安否と、今後ギルドはどう動くべきかということだ。
「シェラさんはどう思います?」
先に口を開いたのはヨシュアだった。
「今回の件、事故なのかそれとも事件なのか……」
これが不慮の事故なのか、何者かによって起こされた事件なのか。
「正直、何とも言えない」
シェラザードが、溜め息混じりに答える。
「先生は一流の遊撃士よ。こと危機管理に関しては桁外れの能力を持っている。事故だろうが事件だろうがその場に先生が居るんだったらすぐに解決されているはずだわ」
けれど突然、定期飛行船はカシウスごと行方不明になった。
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