TOP
turn right!
←page list
_______9
何がそうでもないわよ、なんだ。
傷口を抉られた気分。レフの顔が更に曇る。
「シェラ姉…」
「シェラさん」
ブライト兄弟の視線が一気にシェラザードへと集中する。
無言の「レフをいじめるな」の視線に、シェラザードは身震いした。
「半分冗談よ、もう、怒んないで」
本当に末恐ろしい姉弟だ。
「半分?」
「どういうこと?」
「で、何なんだよ」
聞き返す三人に、銀閃はこほんと一つ咳払いをした。
「今のはXVII星の逆位置。正位置は真逆に存在するの」
「…はぁ」
レフの気のない返事に、彼女は続ける。
「人の心に素直で純粋な欲求をもたらすことで、成功へと導く道が開けるの。あなたたちに言えるのは、まずは「現状への感謝」。少しくらい辛いことは乗り越えなきゃ」
「シェラ姉ー…いいこと言ってるようで言ってないわ。「我慢しろ」ってことよねつまり」
エステルまで意見してきた。
「勉強になります」
「ヨシュアはいい子ねー。ほかの二人と違って」
「む」
「悪かったな」
神妙な面持ちで聞いてくれるのはヨシュアだけだ。
若干切ないが、一応言っておくことにする。
「我慢……ね。まぁいいわ。確かにそうだけど。だからね、私が言いたいのは、表と裏は隣り合わせで存在してる。裏を返せば成功へと変えていけるのも自分ってことよ」
「…」
レフの頭をぽんぽん撫でてやってから、シェラザードは書類を纏め、整えた。
そろそろ三人を帰らせなければ。
自分にもやることがあるのだから。
「まぁ頑張んなさい。来週には正式に後輩になれるはずの、あなたたちへのおねーさんからの助言は以上よ」
「あ…ありがと。シェラ」
「どういたしまして」
滅多に呼ばないのに。
久しぶりに名前を呼ばれ、嬉しそうに唇を歪めた。
「じゃ、帰ろっか。レフもご飯食べてくでしょ?」
「うん」
「さっきアイナさんから聞いたけど、父さん帰ってきたみたいだよ。もう家にいるかもしれないね」
「あのオヤジ!やっと帰ってきたかー」
夕暮れに視界が霞む。
くたくたの体を引きずって、三人はギルドを後にした。
父親・カシウスの帰り(というか土産)を期待して。
next..003
**
11'05/20 10:26
ロレント内半周してみました。てかティオも市長も出すの忘れた;;
14/52
← →
しおり