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「うわー…大半が愚痴じゃない」
それに5回くらい同じこと言ってるし。
「エステル、声少し抑えて」
「ああ、ごめんごめん…つい」
幸い婆さんには聞こえていないようだ。
それにしても、セシル婆さんもそろそろボケが始まったのかもしれない。
普段息子と会話らしい会話を出来ていないのがもどかしいということもあるのだろう。
「やっぱり看護師みたいな子を嫁にって考えてるんだよ。器量のいい子いないかねえ」
「いや、多少なり営業について勉強してる子のほうがいいって、ばーちゃん」
年寄りの小言は長い。
うんうん聞いているレフは尊敬に値するが、この分ではあと1時間くらい取られるかもしれない。
「ねえヨシュア」
「ん?」
「マッサージ分と、愚痴を聞く分で2項目埋めてもいいんじゃない?」
「ズルはダメだよ。ていうかバレるよ」
エステルはレフと婆さんに聞こえないくらいの小声でセコい提案を持ちかける。
それをヨシュアが笑顔で却下を下した。
「うー…1時間かけて1項目って…」
全くもって割に合わない。
「ボランティアもいいとこだわ」
これを10件も回るというのだから。
さっそく心が折れそうだ。
お店のものらしいが、お茶まで頂いておきながら大袈裟に溜息をつくエステル。
これは研修であって、ボランティアではない。
遊撃士の仕事も、こういう身近な頼まれ事のほうが需要が大きいような気もするが。
田舎に限らず、恐らく栄えている都会の方でも。
「でも…喜んで貰えてるみたい。年寄りの扱いはレフに任せるのが一番ね」
「はは。レフは上の年齢層に妙にウケがいいんだよね。口が悪いのに」
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