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「いつも通り研修結果の報告はしてもらうけど、レポートの宿題なんかはないから安心しなさい」
主にエステルに向かって言ったのだろう。
「良かったぁー…」
頭を活用する作業を最も苦手とする彼女がほっと胸を撫で下ろす。
「兎に角、10コ頼まれごとを聞けばいいのよね」
「そうみたいだね…」
「こういうのはじーさんとかばーさんから攻めてったほうがいいな」
3つの頭をつきあわせて相談を始める三人を眺め、妖艶な笑みを向けた彼女は、ゆっくり足を組み直す。
レフは不自然にならない程度に視線をずらした。
先輩遊撃士として尊敬はしているけれど、目のやり場に困る服装をする彼女が正直苦手だった。
こうして始まった研修。
大詰め、ということで「好きにやりなさい」と言ったシェラザードの言葉通り「好きにやる」三人。
街内の人を呼び止め、「何か困ったことはないか」と尋ね頼みごとを終えたらチェックシートの項目を埋めていく。
最初に向かったのはギルドの向かいにあるリノン総合商店。
エステルのお気に入りの店でもある。
店に入ってすぐ、店主のリノンに尋ねたところ母親のほうを手伝ってくれと苦笑するので、ブルーム婆さんのいる2階へお邪魔させてもらうことにした。
「昔みたいに行かないもんだね。苗を買いに隣町まで出ただけで体のあちこちが痛くてねぇ…揉んでくれないかい。あぃたたたた…」
ブルーム婆さんの頼み事とは、「全身マッサージ」。
一人息子のリノンも暇ができれば肩もみ程度してやっているのだそうだが、店を開けなければならないのであまり長いことできない。
整体師でもいればいいのだが、ロレントにはそういったものは無く、それこそ隣町まで行かなければならない。
「それでねぇ、うちの息子ときたら…」
「あーばぁちゃん、CMでやってるからってそういうもの無理やり飲んでも効かないよ。先に血の巡りをよくして…」
このド田舎にあっても儲かるはずがない。当然と言えば当然か。
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