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sora no kiseki
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「とぉおああ!」
「あ、バカそっちアーツ使えって」
「え?…のあぁあっ」
魚介系の魔獣が多いルーアンには、動きはトロくても体がやたら堅いサメとか、一瞬で戦闘不能にさせてくる怖いのもいる。
正遊撃士になったとはいえ、後先考えず突っ込むのは抜けていないらしく、まだまだ危なっかしい触角娘は今日も生傷を作っては悶絶していた。
「いったぁあー あのサメ…逃げやがって。次こそ取っちめてやる」
「ほら、言わんこっちゃねえ。大丈夫か?」
「うーひりひりする」
海沿いを歩いてる途中、遭遇したサメに打ちのめされアヒル座りにへたり込むのは相方のツインテール。
髪が地面についていたから土を掃い、手首を掴んで立たせてやる。
思った以上に細い腕に、不覚にも戸惑ったが、それよりも腕と足の傷から垂れる血にはっとしてティアを唱えた。
(いや そこ、コレ普通の反応だから、俺は悪くないから。)
「結構傷深いな…ほら、消毒するから腕出せ」
「んー?いいよ面倒くさい」
掴んでいた手をやんわり解かれて、俺の手にあった熱が消える。
ケロッとした顔で笑ってるソイツに、俺より後先考えないアホが居た、とある意味感動してしまった。
「あのなぁ」
「えーっと、ほら良く言うじゃん、こんなの舐めとけば治る!」
「どうせオッサンだろ」
「えへ」
「えへ、じゃねえ。似たもの親子」
問答無用で手当てしてやりながら、ついて傍らの少女と同じ髪色の男を思い出してしまい気分が悪くなった。
「はぁ…つうか、そんなので治ったら医者は苦労しねえ」
思えばあの男も人が瀕死なのをそっちのけで魔獣だらけの森に放りだしたりしてくれたな。
今思えば懐かしい思い出と言えなくも無い…いや、悔しいから絶対言わないが。
「あは、」
「ん?何だよ」
不意に、エステルが肩を揺らして笑いだした。
俺は患部から目を逸らさずに聞き返す。
「アガット、今ヨシュアと同じ顔で同じこと言ったから」
昔を懐かしむように穏やかなその声は、少し震えていた。
「そうか?」
「うん」
たぶん笑っているからなんだろう、
さっきも肩が震えてた。
顔を見てもいないのに、なんとなく悪い気がして そう思い直してやる。
「あーあ…ヨシュア今何してんのかなぁ。ちゃんとご飯食べてんのかな」
なんだよ、バーカ。
見え見えなんだよ、空元気。
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