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sora no kiseki

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moonright'

月の光が差し込む木陰の下。
月光浴してるみたいで気分がいいと笑う君は、僕に寄りかかって目を閉じた。





次の街まで何セルジュかはわからないけれど、前の村で聞いた話では森を抜ければすぐとのこと。
けれど、大型の魔獣との戦闘と足場の悪い獣道を歩くのは流石にむずかしい。
日が落ちる前に森を抜けるだろうという計算は大幅に狂い、結局今日は野宿になってしまった。

「綺麗な月……明日は満月かな」
「そうだね」
「これだけ明るいなら、まだ進めるのに」
「駄目だよ。少しは休めなきゃ」
「そうね…」

疲れ切った体を大樹に背を預けて、ヨシュアはエステルに先に眠るように言った。
明日も早い。
体は休めるときに休ませておかなければ保たない。

「じゃあ、交代時間になったら起こしてね」
「うん」

素直に従って目を閉じた後は、相当疲れていたようでエステルは直ぐに寝息を立て始めた。

規則的な息遣い。
寄りかかる彼女の体温が、酷く心地良い。
不意に首がかくんと揺れた。

「おっと…」

もう深い眠りに入ったのか、彼女が起きる様子は無い。
肩に寄りかからせれば、彼女の茶色の長い髪が頬をくすぐってくる。

「…」

月に照らされた肌が青白く浮かぶ。
頬を汚している土埃を少し払えば、彼女はむず痒そうに身を捩った。

攻撃力は低くても巨体の割にスピードのある魔獣を相手にするのは本当に厄介だった。
以前のエステルならああはいかなかったとヨシュアは思う。
後先考えず魔獣に突っ込んでいたあの頃とは違って、彼女も本当に強くなったと再確認する度に自分のことのように誇らしかった。
属性を考えたアーツ攻撃を的確に繰り出すようになった彼女が頼もしくもある。

それでも。

「レン……」

その唇から小さな声で零れた名前にヨシュアはもう一度彼女の顔を見た。

目尻から一筋、流れた涙を人差し指で拭ってやる。

「絶対…あたしが、迎えにいくから…」

小さな小さな、大事なあの子を探す旅。
たくさんの命を見つめる旅。
長い旅はまだ始まったばかり。


「おやすみ。エステル」

囁いて、また髪を撫でた。

約束の時間はとっくに過ぎているが、ヨシュアはそれを見なかったことにして唇を歪ませる。

起こす気など、始めからなかったから。
朝起きたら彼女に叱られるであろうことは判っているけれど。

「寝顔は……前のままだ」

よかった。
ほっと息をついて、銀色に光る月を見上げた。



だって目を閉じればきみが浮かぶから。

だから今日は、眠れない。






copyright*
確かに恋だった


**
11'06/09 23:25

SC以降、レンを探して大陸を二人で旅してる期間だと思っていただけると。
ヨシュエス良いですよね。ほんわかカップル。
17/17

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