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sora no kiseki

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「へー、いつぞやの動力停止現象以来じゃねえか?工房長も大変だな」

入ってすぐ、香ばしいにおいが鼻をかすめた。
アガットを椅子に座らせ、スリッパをぱたぱた鳴らしながら小さい体が部屋中を走り回る。

「それはそうと爺さん達が見えねえが、出掛けてんのか?」

家事など慣れているのは知っているが、何となく危なっかしい。
横目で気にかけつつ 口を開いた。

「あ、今日は三人とも中央工房に篭もってるんです。でもそんなに遅くはならないって言ってました」
「そ、そうか…」

なんだ、いるのかよ。
なら あまり長居したくねえなぁ。
が、ティータの手前さすがにそれはできない。
アガットは引きつった顔で無理に笑顔を作ってみせる。

(しかし…)
淡い期待を持ったのが間違いだったようだ。
早速心が折れそうだった。


「ちょっと前に大きいお鍋を買ったんですよー」

椅子に乗って火元に背丈を合わせた状態で鍋をかき回しながら、ティータがテーブルを振り返る。
アガットも ぐらつく足場に若干不安はあったが、本人が楽しそうにしているので見守ることにした。

だが、やはり期待を裏切らないのがティータのティータたる所以か。

「おかわりいっぱいあるので、遠慮しないで……ひゃっ」
「ッ、ティータ!」

案の定、椅子がぐらつき、小さな体はテーブルのほうへ傾いたのだった…!

「たーだいまーティータぁ〜……あ?
「おや…来てたのかアガット君」
「おお、そういえば今日は金曜じゃったの」

間一髪のところで抱きとめる。
何が起こったのかいまいちわかっていないらしく目をパチパチさせているティータの頭に顎を乗せ、アガットは本日何度目かわからない溜め息をついた。

むしろコレも仕込みか?
いや流石にねえか。

「…ふう…危なかっ……ん?何だ?悪寒が…」

何となく危険を察知し、恐る恐る振り返る。
そこには、彼の胃痛の元凶とも言える人物が般若の形相で仁王立ちしていた。

どうやら帰ってきた三人が玄関に入ってくるのと同時だったらしい。
その場の空気が、一瞬にして凍りついた。

「な……ッ」
(もう帰ってきやがった!)

「くぉら赤毛ぇええ!」

そう叫んだかと思えば、ものすごい勢いで突進し、二人を引き剥がすエリカ。
それからアガットの胸倉を掴み上げた。



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