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Yu u ka i i chi re n

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「悠名、先程はどうしたのだ?いきなり飛び込んできたと思えば、何でもないと言っていなくなるし…やはり元気がないように見えるのだが…心配ごとでもあるのか」

伊達が遊びに来たということで、夕食は他の家臣も交えて宴会状態。
伊達、お館様、旦那の順に杯に酒を注いだ悠名は静かに自分の席に着く。

「何でもありません、お義父様。さっきは騒がせてごめんなさい」
「悠名殿は早朝から掃除に稽古と忙しい一日を過ごされた。疲れが出たのでござろう」
「え…そ……そう、なの?」
「はい。お義父様。お恥ずかしながらそのようですわ。惡捕捕捕捕(おほほほほ)」

座る直前、一瞬だけ天井を突き抜けて此方を睨んだその目に ひやりとしたがその後は黙々と目の前の料理を食べ始めたようだった。
明らかに俺様気付かれてる…本当に この子は、ただ者ではない。

「そう言えばあの後から佐助の姿が見えぬな。急ぎではないが頼まれたいことがあったのだが…何か頼み事か、幸村」
「いえ、某は特に何も申しつけておりませぬ。悠名は-」

「 知 ら な い よ 」

旦那の言葉を遮っての即答。
たった5文字のドスの利いた声にそこにいた全員が悠名を見る。

それ以上俺の話題を出してほしくないのだろう。
無意識に指に籠もった力が箸を折りそうなくらいだ。

「こら、嘘はいけねぇなlady」

二杯目の杯を手にした伊達が口を開いた。
その語尾はわざとだろうが笑みを含んでいる。

「大半は猿のせいだろうが、1/4くらいはそうなる原因作ったお前のせいだぜ」
「ま、政む……伊達殿…それはどういう…」
「No problem,真田。これは猿と悠名の問題だ。口出しは不要」
「しかし…」

理由を知っているらしい伊達に、旦那が不安気に口を挟むが伊達はそれを制し、悠名を諭した。

「それにここは酒の席だ。そう無闇に殺気を出すなよメカ女。折角の酒が不味くなる」
「メカ女言うな!幸村も ほっとけばいいじゃん、あんなアーミー忍者。お腹すけば勝手に帰ってくるでしょ」
「悠名…」
「くどい」
「分かり申した…もう言いませぬ故」

しょんぼりした旦那に、言い過ぎたかと罰の悪い顔をしてから また黙々と食事を再開する悠名。
それでも、姫様はご乱心のようだと囁き合う家臣に対しては「箸が止まっておられるようですが 何か他の物を持たせましょうか?」とにっこりと笑う。
心の中だけで「姫様こえぇー」と叫んだ女中にも笑顔で返す。
無言の「黙れ」に お館様までもが縮みあがった。

…こわい。本当。
俺様、こんな織田信長の女版みたいな子とお食事ご一緒してるみんなを尊敬するよ。

「お館様ぁ…悠名の可愛らしい顔が般若へと変わってしまったでござる。某はどうしたらいいのでござろうか」
「ふむ……若いもんはいいのう、がっはっは」
「笑い事ではないでござる…きっと佐助が悠名に何か気に障るようなことをしたのではないかと」
 
「良い、良い。幸村。伊達殿の言うことも尤も。今は放っておくことだ」
「しかし」

「さて明日は赤飯で祝うとするか、よっこらせ、伊達殿、皆の者、存分に楽しんでおられよ。儂は小豆をつけてくる」
「お館様ぁ…何故赤飯なのですかっ…」
「おうサンキュー虎のオッサン。おら幸村、こっち来て座れ。Come on,baby俺の膝の上」
「伊達殿、酔っておいでか!うわぁどこを触っておられる!おやめくだされ」
「いいから政宗って呼べよ、ったくお前は……So cute幸村っ…今宵もお前にcrazy!」

何か感づいたらしいお館様を追いかけようとする旦那が伊達に捕まる。

その間、悠名は只管がつがつと目の前の料理を食べるのみ。
旦那のぶんまで食べちゃって。太るよ悠名。
俺様 肥えた悠名なんて想像できないんだけど。



それにしても。
「ほっとけばいいじゃん」、ね。
ちょっとキツいなぁ。

まぁ内容が内容だし悪いのは俺だけど。
これはどうやって謝ろうか。
どの面下げて悠名に会えるっていうんだ。

あんなコトしといて、全部許してもらおうとまでは思ってないけど。

口、聞いてくれなそう。
耳、貸してくれなそう。

むしろ「どちらさまでしたっけ」とか記憶の中から抹消されたことにされてそう。

ああ…凹む。


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