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Yu u ka i i chi re n

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旦那と伊達が「大事な話」があるというので、その場はとりあえずお開き。
まだ興奮気味のイノシシ姫を俺様のお菓子で何とか釣って、場所を変えた。

中央のお館様の前に、胡坐(あぐら)をかく俺と悠名。
お姫様が胡坐かくなんて、俺様聞いたことないんだけど。
ていうかお館様も一応それ父親としてどうなの。

現在、お館様と一緒に三人で作戦会議もといあほな考えを考え直させようの会議真っ最中なわけなんだけど。

「しかし幸村が嫁に出てしまえばその代わりは婿の悠名に任せねばならぬなぁ」

いや婿って…お館様、絶対面白がってるでしょ。
仮にも最強と謳われる甲斐の虎師弟の間に割って入られる女子なんて、きっと悠名くらいだろう。
やけに「にこにこしている」お館様を前に、俺は少し冷や冷やしていた。
 
まさかこのオッサン、悠名を戦闘要員に考えたりはしていないよね。
普通の女子とは思えないくらいの勇気があるし、足は忍並みだし、瞬発力がある。
そこは認めるけど、絶対に危ないから。
いくらお館様の命令でも俺様聞けないからね?

「大丈夫だよ佐助!私、得意技があんの」

ハラハラしながら見守る俺に、悠名が不意に向き直った。

「藤堂流奥義・猫騙しでしょ、藤堂流奥義2・竹とんぼでしょ…」
「奥義って、悠名…それ効かなかったらどうするのさ」

それに、奥義2ってそれどうせ「カンチョウ」とかでしょ…
 
確かにやられたほうは精神的苦痛はあるかもしれないけどね…なんてお下品な。

「効くんだよ、それが。ほら佐助、
 ねこだまし!」

ぱん、

言った瞬間、俺の目の前にもって来た両の掌を叩く。

「…わー、びっくりした」
「でしょでしょ」

瞬きが3回。
その間、悠名は掌を合わせた状態で停止。
…真剣勝負なら、5回は殺されてるな、これは。

「って、でしょでしょじゃない!こんなんで独眼竜が倒せるかぁ!猫一匹だって倒せないよ!」
「何だよ、佐助今ちょっとびっくりしたくせにぃ」

びっくりの意味が違うわ!
 
「この、アホの子!」
「私、虎の子だもん!」
「養女でしょーが!」

「わっはっは、天晴れ!」

「あまりのこと」に腰が抜けかけた俺は放置で、笑ってるお館様にまで「奥義」をかましている悠名に盛大な溜息が出る。

もう、何してくれちゃってんの。
そんなの…




そんなの、可愛いだけでしょーが。




少女の顔をして笑う悠名を、俺は素直に応援出来ないで居た。

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