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Yu u ka i i chi re n

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小さく溜息をついて、むくれてる顔に苦笑しつつ頭を撫でてやる。

「わたし、子供じゃないんだけど」
「ご機嫌直してくれませんかね」
「い や だ」
「そんなに拗ねないでよ悠名ぁ…」

でも…まぁ、子ども扱いしてるわけじゃないんだけどな。
なんか一生懸命なのが可愛くてさ。

「悠名の考えてることなんて分かり易過ぎて考えなくてもわかるよ。どうせ今「そんなこと言うなら幸村のおよめさんになってやる!」とか思ってるんでしょ」
「う…なんでわかっ…」

うわぁ図星ですか。俺様冗談で言ったんだけど。

「あのね、そもそも例えであって、悠名を人質になんてさせるわけが…」
「やる前からできないって、何でわかんのさ。佐助は私の実力を知らないからそんなことが言えるんだ」

突如、禍々しい殺気に似たそれを感じて、頭を撫でる俺の手が固まった。
 
悠名の顔が、段々性悪なそれに変わっていくことに気づいてしまった俺様の額からは変な汗が。

「…決めた」
「え、悠名さん…?」

激しく嫌な予感がするんだけど。
「幸村襲って既成事実作ってやる」
「っちょ、待って待ってなにそれ」

本当、何考えてるのさー!!





* * *





「もう、ついてこないで!」
「バカー!早まっちゃいけません!」
「バカって言ったほうがバカなんだよオカン忍者!」
「そこ、オカンとか言わない!」

韋駄天か、と思うくらいのスピード。
流石の俺でもビビったほどの速さで悠名が足を止めたそこは稽古道場。
ちょうど今は、お館様と旦那が…って!

「頼もーう!!」
「頼もうじゃないよ!駄目だってば!」

何 雄雄しく戸開けちゃってんの!
マジ本当、悠名さん今から旦那襲う気!?
 
「ぃゆきむらぁあ!」
「ぅおやかたさむぁあ!」

稽古とはいえ、今は危険だ。
走り出した悠名を止めようと手を伸ばした、けれど。

「幸村ぁ!」
「お館様ぁ!」

俺の手は空に触れただけだった。
悠名が消えた。
いったいどこへ…

「ストーップ!」

バシッ、

声と音がしたのは ほぼ同時だった。
二人の動きが止まる。
俺が止める間もなくそれは起こっていた。
白くて細い腕が二人の顔を押さえつけている。

…って、えええええ!?

「ちょっと幸村聞いて!」
「なっ、悠名!?」
「おお、悠名ではないか。佐助かと思ったぞ、実に良い動きじゃ。いや天晴れ」
「天晴れじゃないよお館様!!悠名っ怪我は!?痛いところはない!?」
 
「えーもう何お母さん、今それどころじゃないんだけど」
「いやだから、俺様お母さん違うから!ナチュラルに呼ばないでよ!」

突然「甲斐の虎」と「虎の子」の稽古の最中に、間に入ってきた桃色の塊は悠名姫様。

そう仮にも姫様なんですよアナタ。
本っ当勘弁してくれないかな、怪我したらどうするの…!
そしてそのときの俺様はどうなっちゃってたの!?

「藤堂悠名、真剣勝負をお願いしに参った!」
「…へっ?」
「勝負、とな?」

悠名の言葉にキョトンとしたお館様。
旦那も目を瞬かせる。
次の瞬間には、懐に仕舞っていた紙をその顔の前に突き付ける。
そこには毛筆で「果たし状」と大きく書かれた文字が。
い、いつの間に書いたんですか…

つうか字、糞へたくそ…。(失言)
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