TOP
Yu u ka i i chi re n

page list
_______2

そして今現在。
俺がちょっと目を離してる隙に、悠名がまた突拍子もないことを始めていたわけで…

着物の袖を起用に背中で交差させて縛り、汚れないように準備までしちゃって、縁側のお掃除。
その格好、普段のおしとやかな格好よりもとても良く似合ってらっしゃるよ、姫。
(※ほめ言葉です)

「姫様、次は何をなさるおつもりですか…」
「風呂場のお掃除をします」
「姫様ぁ…もうそのあたりにして、お休みになられては…」
「じゃあ命令!信玄様が私に働かざる者食うべからずって仰ったの。私は信玄様の命令で働いています」

ちょっとちょっと?
なんか嘘付き始めたよこの子。

「ちょっとまだ勝手が分からないし、私が間違ったことしたら言ってね」
「間違ってますよーもう、そのへんにしときなさいね?」

ぱしーん!!

「いったぁ…!」
 
突然叩かれた頭を抱えてへたり込む悠名。
隣で「姫様に何をなさいます!」とか激怒してるおねーさんを適当にあしらって「仕事」に戻らせて、一件落着。
でも面白いもの見せてくれてありがとね、お姉さんたち。

「ちょっと佐助!いきなりなにすんのさ!」

まだ頭を抱えて唸りながら抗議の声を上げる悠名。

「俺様の目を盗んで何してるの、悠名も一応姫様なんだから下働きなんて駄目に決まってるでしょ」

俺は目線を合わせるようにしゃがんでやり、悠名の着物についた埃を掃ってやる。

「私、ここに置いてもらう以上、何かの助けになりたいんだ」
「武田の為に働きたいってこと?」
「そう!さすが佐助!話が分かるじゃん」

どうやら食い下がるつもりらしい。
まぁ、ここに来たときのウサギみたいに縮こまってた頃に比べたら、元気になってよかったけどさ。
 
袖を縛った布を外してやる間、大人しく聞いてれば悠名は俺様があれだけ強めに どついても全然懲りた様子がなく、にこにこと笑っている。

ていうか、もぞもぞ動かない!
紐が解けないでしょうが。

「信玄様に外で働くの駄目って言われたからどうしたらいいのかわかんなくて…」

当たり前でしょう悠名姫様。
よし、紐解けた。

「でも、やっぱり部屋で本読んでるだけじゃ落ち着かないし」

本当、旦那と似てて犬みたいだもんねぇ、悠名は。
落ち着きってものを知らないというかなんというか。

「…ってことでさ、相談なんだけ-」
「だめ」
「へっ?」
「そーゆうのはいいの」

何か一つ許せばあれもこれも、と言ってくるに決まってる。
悠名には窮屈に感じるかもしれないけどそこはお館様と旦那に頼まれてる身として見過ごせませんよ。
可哀想だけど、ね。
 
「よくないっ!だってヒマだし」

うーん…困った。譲らないねぇ。

「フツーお姫様って何してんの?本でも読んでろって?」

とりあえず、縁側に座る悠名の脇に移動。

「奥州あたりにでも人質になりに行くとか?お嫁さん。竜の旦那風に言うと じゅーんぶらいど」
「佐助のバカ!意地悪!私の気も知らないでッ」

返した言葉に悠名は今度こそ拗ねてしまった。
またお姫様扱いに逆戻りして機嫌を損ねた悠名から、沸々と見える「何かしたい」オーラが体中に溢れている。

まぁ、気持ちはわからなくもないけどさ。
意地悪なことも、言わなきゃいけない俺様の立場をもう少しわかってほしいなぁ、と思う。


 
39/47

  
しおり

TOP

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -