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Yu u ka i i chi re n

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「これで一件落着だな」

夕食の席で、お館様はそう言って豪快に酒をあおった。
家臣達も「良かった、良かった」と皆笑顔で祝い酒を酌み交わす。

俺もいつもの天井裏で「うんうん」一人頷く。
旦那は豪勢な料理を前にポカーンとしている悠名に向き直った。
ぽかんとするのもその筈。いつも猫が食べるようなもの食べてるし、豪勢なお食事なんて慣れないんだろう。
おいしいご飯いっぱい食べられて良かったね…とほろりと心の汗を拭った。

「悠名にも心配かけて、申し訳なかった。陽名殿のことも丸く収まったようだし、某からも礼を言わせてくだされ」

旦那の言葉に、はっとして箸を置いた悠名が 慌てて口を開く。

「ううん。それより、幸村が元気になってよかった。ずっと心配だったんだから」

うん、そうだね。
死んじゃったらどうしようなんて泣きじゃくってたもんね。
俺様あれは一生忘れられないと思う。

「あ、いや…その件で、某は悠名に謝らねばならぬことが」
「ん?何?」
「実は…」

悠名の耳に旦那が口を近づけて、こっちには聞こえないくらいの声での、内緒話。
「あれは…けちゃっぷでござる」

なんとなくムッとして、裏からぴたりと耳を当てた直後、その言葉だけが聞き取れた。
ああ、バラしたんだなぁ、なんて思っていたその時だった。

「…佐助」

ものっそい低い声の悠名姫に、呼ばれたのは。

「あいよー」

何の警戒もなく祝いの席へ。
飛び降りた俺を待っていたのは――。

ばっしーん!!

「いっだぁあああ!!」

…悠名からの凄まじいビンタだった。

いやあの、姫様、凄く痛いです。


「ひ、姫様!?」
「姫様が乱心じゃああ」
「誰か取り押さえろ!」
「お前仲良いだろ!ほら行け、Go!」
「無理ですぅうまだ死にたくない!」

 
一瞬でそこは大騒ぎになった。
家臣が騒ぐ中お館様は「いや天晴れ!」とか喜んでるだけで、助け船を出そうともしない。

「だ、だって旦那とお館様の命令でっ!聞かなきゃ俺様大罪だよ島流しだよッ
それに幸村の吐血がケチャップだとか知ったの、昨日だから!」

「うるさい!!私がこの一週間どんな気持ちで過ごしてたと思ってるの!
あーそうだ服!縫っといたからッ!じゃーねっもう寝る!
失礼しますお義父様、幸村お休みなさいませ!
バカ佐助も お休みッそしてさよならっ」

「おう。ゆっくり休むんじゃぞ悠名」

「ちょ、悠名!何最後の!さよならって何!?」

叩かれた頬を抑えながらの俺の叫びが悠名に届くことは、今日は恐らくもう無い。

嗚呼、周りの「あーあ…」という目が痛い。

 
ていうか俺様悪くない!
悪いのはそこのオヤジとその弟子だから!
俺様だって一応共犯とはいえ被害者なんですけど!!



「ところで佐助、お主 裁縫は得意ではないか。何故悠名に?」
「…悠名がいい糸持ってたからだよ」



あーもう、姫様の機嫌直すにはどうしたらいいんでしょうかね。
誰か教えて!
ねえ!笑ってないで!!






それから、悠名の機嫌が直るまでまぁ、俺様色々苦労したんだけど…




こうして、愛でたくも
幸村様三つ巴事件は幕を閉じたのでした…





ああくそ、猫の件もあったから気になって一応調べた団子屋の主人も別に殺されてなかったし!
店のおばさんには妙に気ィ遣われて見合い話持ちかけられるし踏んだり蹴ったりだよ全く。




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11'05/13 再録
 
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