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Yu u ka i i chi re n

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* * *



「どう、気分は。目眩とかする?気持ち悪くない?」
「…佐助……」

悠名が目を覚ましたのは、夜も更けた頃だった。
覚束ないように呆けていた顔が、一気に青ざめていく。
今までのことを全て思い出したらしい。

「幸村は!?幸村は大丈夫なの?」

ガバッと起き上がり、悠名はそう聞いてくる。

「大丈夫。暫くは寝ててもらうけど…心配ないよ」
「よかった…」

ふう、と溜息をつく悠名。

「あの、それはそうと、私いきなり姫様とか言われて…状況がわからないんだけど。どうなってるの?」

俺も一先ずは安心した。
思ったより元気そうで良かった。
 
「今の状況を考えたお館様の計らいだよ。まぁ、前から決めてたみたいだけど」
「信玄様、私を疑ってないのかな。幸村があんなことになったのに」

悠名は肌掛けをぎゅっと握りしめる。

「悠名にそんなこと出来るなら、今までだっていくらでも機会はあったでしょ」

悠名を安心させるように、俺は俯く顔を上げさせて頬を軽く抓ってやった。

「それに、そーゆうこと出来る子じゃないってみんな思ってるよ。悠名、正直だもん。嘘だってすぐバレるしね。ああそうだ、煮干し、勝手に持っていったらダメでしょう。あれ結構高いんだからね」

それから摘んだ右の頬を横に伸ばす。

「ば……ばれてたんだ」
「兎に角今日はもう休みな。明日、旦那のとこ連れてってあげるから」
「うん…」

よしよし、
頭を撫でる俺に、今日は子供扱いするなとは言わなかった。
 
「あの、ね…それと…あの子は…どうしてる?」
「あの子?」
「陽名ちゃん…幸村があんなことになって、本当にショックだと思うし」

そう聞いてくる彼女の顔は、何も知らないそれではなかった。
多分、何かしら気づいているのだろう。

「うん。大丈夫。もうすぐ会えるよ」
「もうすぐ?」
「そうしたら、あの子を連れてくるから」
「そっ…か」

もうすぐ、と言い聞かせるように彼女は呟く。
本当のことを知ったら、この子はどうするのだろう。

「私、力になるどころか…」

みんなに迷惑かけちゃってるね。
悠名は途中で口を噤んだ。

相当参ってるなぁコレは。
また余計なこと考えてるでしょ。

本当にこの子は…
自分の心配より、他人の心配で頭をいっぱいにするんだから。




「あのさ。悠名に頼みがあるんだけど」


そう言って俺は綻びた羽織りを脱いで、悠名の前に差し出す。



「これ、縫っといてくれない?」



大丈夫だよ、悠名。
俺も旦那も。お館様も。
君が笑ってくれるだけで、それだけでいいんだから。




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11'05/13 再録
 
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