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Yu u ka i i chi re n

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思ったより早く片付いた。
屋敷倉庫の隠し扉の裏から大量に出てきた証拠の品と、木箱の中には ある商人家系の家系図。
伸びた線の先には、見知った少女の名と、その隣には男子の名。
恐らくこれが、彼女を縛るもの。
全て突き付け武田の名を出してやれば簡単に縄についた。
後は俺の仕事じゃない。
問題の幼子を女中に託し、柏葉屋へ。

頼まれたものは…あと もう一つ。
もしものことがあれば、と考えては止め、考えては止め、を繰り返す。

囮など、どうとでもなったのに ここは自分がと譲らない主君の案を何度はね退けたか分からない。
 
気が進まないどころではなかった。
命令が絶対でも、主の選択が絶対とは限らないのに。
それでも俺は、身が凍る思いでそれを見守るしかなかったというのに。

本当にあの人は、いくら俺の寿命を縮めれば気が済むというのか。



* * *



「はい、幸村。サービス」

いくつ目か分からない草餅を片手に 難しい顔をしていた旦那へ、笑顔で団子の皿を差し出すのは悠名。
店の仕事が板に付いてきていたようで 落ち着いた雰囲気を出すようになっていた。

「おお!みたらし団子!」
「私が作ったから、形悪いけど」
「ならば食べるのは勿体無いでござるなぁ」
「えーっ食べてよ。せっかく作ったんだから」

流石に店まで近づくことは危険と思い、境内の脇に身を潜める。
これ以上近づけば感づかれてしまう。
 
二人の様子に、「まだ」何も起きていないことにほっとしたが、それも一時的なものだ。
「彼女」が失敗すれば、全てが終わる。
俺は 耐えなければならない。

それでも 遠くから見えるあの子の無邪気な笑顔は相変わらずで、知らぬうちに口元は歪んでいく。

元々言うつもりは無かったが、やはり猫の件は黙っておいて良かった。
 
主の前で、あの子は本当によく笑うから。

 
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