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Yu u ka i i chi re n

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「む。そうであったな。陽名殿、全種類4つずつで」
「ふふ、わかりました。全種類5つずつですね」
「何息合ったコントしてんの」

楽しそうな三人の会話。
入り込めない…
佐助が不意にこっちを見る。
無言の「お茶、まだ?」の目。

そうだ。
お茶、いれて来なくちゃ。


振り返る先に、幸村に笑いかける陽名ちゃんの姿があった。
可愛らしい彼女の笑顔は、あの目をした少女とはとても信じられない。

冗談だと、意地悪してごめんとも言っていた。
そう。ほんの冗談。…だけど。
 
私にも、わかる。
想い人と共に居られる人を羨むことなど、誰にでもあることだ。

私だって、夏樹先輩が連れて歩く彼女が羨ましかった。
紹介された時なんか、憎らしく思った。
勝ち誇ったような彼女が妬ましかった。
先輩の恋はいつも長続きしないから、また次の子、次の子…それでも自分は、いつまでも彼にとっては「友達の延長」の子。
あなたが好きなんだよって言ったって はぐらかされて…
女の子として見てほしいのに、先輩はいつも「可愛い妹」として私の頭を撫でて笑ってた。
私の大好きな笑顔で。

純粋に想い続けているのに、好かれたいから可愛くなりたいと思うのに。
膨らんでしまうのは、「あの子さえいなければ」という醜い感情ばかり。

でも、私は、此処に来て初めて陽名ちゃんっていう同い年くらいの女の子に出会えたんだ。
だから、できれば仲良くなりたいんだ。

だって私は幸村の彼女じゃない。
あなたの敵じゃないんだから。

伊達さんには悪いけど、幸村だって陽名ちゃんに対して少なからず好意は持ってる筈だし。
何とかしてあの二人をいい雰囲気に出来ないかなぁ。

佐助に…相談してみようかな。
佐助は陽名ちゃんのこと好きみたいだけど、しょうがないもんね、こういうことは。


「悠名さん、大丈夫?せっかく幸村様来てくれたのに元気ないじゃない」
「おばさん…」

他の住み込みで働いてるお姉さんと入れ違いに休憩。
裏で座っているとおばさんが声をかけてきた。

「今の顔は…幸村様のほうの悩みでしょう、どう?あたり?」
「当たってるような当たってないような…」
「今日は陽名さんに幸村様取られちゃったから?」
 
「そうじゃなくて、私、陽名ちゃんと仲良くなりたくて…」

指を組んで、解いてを繰り返す。

「陽名ちゃんと幸村、お似合いじゃないですか?ほんわかカップルみたいで」

おばさんは私の目線に合わせてしゃがむと 私の額に人差し指を軽く押し付けて、ニッと笑った。

「もしかして…あの二人をいい雰囲気にさせるにはどうしたらいいか、もう一人のお兄さんに相談する気だった、とか言うつもり?」
「おばさんすごい。なんでわかるの?」

たまに、おばさんは お母さんと、同じことする。
言い当てられたことより、その仕草にびっくりした。

「おバカ」
「えっ…」

ピン、と額を指で弾かれて片目を瞑る。

「悠名さん、それはお兄さんが可哀想だわ」
「どっ…どうしてよ?そりゃ、佐助は陽名ちゃんのこと好きみたいだけど」

溜め息をつくおばさんに 私はわけがわからなくて聞き返した。

 
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