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Yu u ka i i chi re n

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外に立てかけてあった大きめの敷き板をおばさんに言われた通りの場所へ移動。

「おお悠名!精が出るでござるな」

暖簾を下ろして、傘を開いたところで聞き慣れた ござる口調が上から降ってきた。

「幸村!佐助も…来てくれたんだ」

しゃがんだまま見上げれば、青年が二人。
幸村は にこにこと、佐助は 小さな子を見守るような目で私を見下ろしている。
あのね…私、そんなに危なっかしいですか。

「臙脂色の着物がよく似合っているでござる。いつもと違う格好の悠名も可愛らしいでござるな、佐助」
「な、何で俺に振るのさ」
「佐助が素直に言わないから代弁したのでござる」
 
幸村にからかわれてムッツリした佐助に私がプッと吹き出すと 彼はますます嫌そうな顔をした。

「あは、佐助可愛い」
「何それ…可愛いとか言われてもねぇ」

さっきまで相当気を張っていたらしい。
一気に力が抜ける。
何だか佐助の顔を見たらほっとした。

「そんなことより悠名、今日は大丈夫なの」
「ん、なにが?」
「怪我とか…火傷とか」
「うん、大丈夫だよ」

…や、ちょっと待て自分。
気が抜ける?ほっとする?
な……何で?

「本当に何も起きてない?」
「もう…私そんなに信用ないかなぁ」
「怪我がないならいいよ。…あ」

「幸村様…」

後ろから陽名ちゃんの声がして振り返る。
陽名ちゃんの頬はほんのり赤く染まっていて、控え目にはにかんでいた。
なんて可愛らしい…
アキバ風に言ったら「萌ぇ!」って感じだ。

陽名ちゃん、幸村に話しかけたいみたい。
でも佐助が何か異様に陽名ちゃんを見てる。

陽名ちゃん ずっと私の後ろにいるけど…もしや、佐助が怖くてこっちに来れないんじゃ…

「佐助こっち。奥に座って。はい、幸村はこっちね」
 
陽名ちゃんが話しかけやすいように、私は奥に佐助、手前に幸村を座らせる。

幸村、こんな可愛い子に想われてるのにわかってないなんて。
なんて勿体無いことしてるんだろうか。この、非国民…いや非甲斐民!
伊達政宗なんかから乗り換えちゃえばいいのに。

…あぁ、そうだ。
さっきは幸村の話題で陽名ちゃんと気まずかったから、全然関係ない佐助を見てほっとしたんだ。
 
そうだ、きっとそうだ。
ああもう…おばさんのせいだからね。
あんなこと言ってくるから、変にアーミー忍者の意識しちゃうじゃないですか。

さっきの様子じゃ幸村しか考えられてなさそうだし。
佐助、可哀想だけど見込みないかもね。

「はぁ…全く、こっちの気も知らないで…しょうがないね、この子は」
「ん?佐助、何か言った?」

「何も。俺様お茶だけでいい」
「はい…幸村様は何になさいますか?」
「三色団子と桜あんの饅頭と草餅と…えーとそれから…」

注文を聞いた陽名ちゃんに、はっとして今は仕事中だったことを思い出す。
陽名ちゃんは幸村と話したくても我慢してるのに。私のバカ。

「…餡団子と糊団子を3つずつ」
「旦那、それ全種類3つずつって言った方が早いよ」
 
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