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Yu u ka i i chi re n

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「いーい?お姉さんには、夏樹先輩っていう世界一格好良い人がいるの。幸村は友達!まぁ、幸村のことも格好良いとは思うけどさ…」

てかその前に、幸村には伊達さんがいるしね。
あの二人がどこまでいっちゃってんのかは知らないけど…うわ、何か嫌だ、想像したくない。

「えー。ゆきむらさまふられたー」
「ふられたー」
「おねえさん、こいびとがいるんだ」
「こっ、恋人じゃないよ!…私が片思いしてるだけで」

きゃっきゃっと屈託のない笑顔の三人に、仮にも16歳の私が振り回されてる。
うぅ、まだまだ修行が足りない…
 
「それはそうと、みんな今日は早起きだね。どうしたの?何かあるの?」
「へへん、きょーは、あそびにきたんじゃねえんだぜ」
「だぜ!」
「あした、ここで えんにちがあるの。おてつだいにきたの」

明日の縁日のために、ご両親や町の人のお手伝いをする目的で来たらしい。
女の子の説明に「なる程」と頷いて もう冷めてしまったお茶を飲み干す。

てか、もう大人の人集まって何か始めてるみたいだけどいいのかな?
手伝いをしに来たと言った傍から、遊んで遊んでとせがむ三人に苦笑。
鳥居の下で作業してるおじさんたちが やれやれという顔をしていた。

おじさんたちは、私に軽く笑いかけた後は作業を再開してしまう。
どうやら子供の戦力は宛にされてないようだ。
まぁ、しょうがないのかな。


「あらあら、悠名さんは幸村様と一緒にいるだけあって子供たちと仲が良いのね」

ひょこ、と店から顔を出したおばさんの声に振り返れば、お盆にお茶菓子を4つ乗せて立っていた。
 
「おねえさーんおまんじゅうくださいなっ」
「くださいなっ」

すかさず強請り始める男の子二人。
す、素早い…
その隣で おろおろしてる女の子。
でもお饅頭を見て目をキラキラ輝かせているのは容易に見て取れた。

「あらあら〜おねえさんだなんて!いい子たちねぇ。もう、うちの子になっちゃいなさいっ」
「なるなるー!」
「なるなるー」

いや、おばさま…「チョロいなこのババァ」っていう声が聞こえてきましたけど…ああ、聞こえてないんだろうなぁ。

「はい、まだ熱いから火傷に気をつけて食べるのよ」
「はーいおねえさん!」
「はーい!」
「い、いただきます」

おばさんから饅頭を受け取って、小さな手に持つ三人を微笑ましいなぁと思いながら見ている間に、次の饅頭が蒸し上がったようだった。
それから、私も作業開始。

お昼になったら 神社で作業してる人たちにお茶菓子を配ったりして、気がついたらもう夕方になっていた。

 
「今日は陽名さんも来てくれるはずだったんだけど急遽お休み取っちゃってね、悠名さん初めてなのに大変だろうなぁって思ってたんだけど、働き者だからおばさんすごく助かっちゃったわ。来てくれて本当にありがとねえ。それに、うちのお皿で怪我しちゃったのに何のおかまいもしないで…ごめんなさいね」

暖簾を下ろしながらおばさんは嬉しそうに私に笑いかける。

「初日だから少し不安でしたけど。楽しいです。すごく」

私も布巾を畳みながら、おばさんに笑顔を向ける。

「そう?良かった」

夕日色に染まるおばさんに母の面影を見て、少し胸がつきんと痛かった。


「ところで、ねえ、おばさんずっと聞きたかったんだけど」
「なんですか?」

「悠名さん、他に好きな人がいるのに二人の殿方侍らせて…相当やるわねぇ」

瞬きを繰り返す私に、おばさんが勘ぐるようにそう言った。

「へ…?」

意味を汲み取るのに数秒かかる。

「罪作りな女の子ね」

思考停止した脳が、一気にフル動員で活性。
今考えなくたっていい余計なことまで考え出す始末だ。

「そ…それって幸村と佐助のこと!?」
 
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