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Yu u ka i i chi re n

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「しかし…今日は悠名の初めての、」
「コラ。なんだかんだ理由つけて逃げる気でしょ。そうやって悠名にまで迷惑かけないの」
「ぬぅ…」
「へーえ。あっそ。旦那は俺様が減給されてもかまわないわけだ?忍びの安月給知らないわけじゃないよね」
「…そんなに安月給というわけでもなかろう」
「何か言った?」
「何でもござらぬ…」

佐助の言葉に、幸村は眉を下げて随時と情けない顔を作った。
キューンと捨て犬のような鳴き声が、こっちにまで幻聴になって聴こえてくる。
幸村の「その顔」に負けじと譲らない佐助。
効かないことにうなだれる幸村は、私にも「その顔」で助けを求めてくる。
 
「ゆ、ゆきむら…」

こ…コレに落ちないとは、さすが幸村専属護衛。(※減給が懸かってるからです)

「えーと…佐助…、今日くらいはいいんじゃない?」
「だめ」

私の助言にもならない言葉は、その二文字に一喝された。

「旦那は甘やかしても成長しないの俺知ってるんだから」

ああ捕獲された幸村がキュンキュン鳴いている。

「ごっ…後生でござるぁ!」
「だーめだってば昼からは爺さんたちから大事な話があるんだから!旦那が逃げないように捕まえてろってお館様にきつく言われてんの。今日という今日は逃がさないよ」
「うわぁああん!!」

「じ、じゃあね幸村、佐助。お土産買ってくるから」

「佐助の意地悪ぅ!」と叫ぶ幸村に手を振り 屋敷を出て、真っ直ぐ神社近くにある甘味処柏葉屋へ向かう。

昨日幸村と寄ったついでに、こっそりお店の女の子にバイト募集してるか聞いてみて良かった。

確か、陽名ちゃんだったかな。
凝った肩を解そうと、伸びをしながら あのおかっぱの女の子を思い浮かべる。
 
あまり話さない子みたいだけど、仲良くなれたらいいな。
幸村のこと色々話せると思うし。
幸村は常連さんみたいだから、今までの幸村がどんな感じで過ごしてたかとか聞きたいし。

それと…佐助のこともちらっと話してみようかな。

ちょっと聞いてすぐ店のご主人の男性に話を通してくれて、人手が足りないこともあって、その場でOKが出たのにはびっくりしたけど。

これは、私に運が向いている証拠かもしれない…
よっし、頑張るぞー!



* * *




「悠名さん、それ洗い終わったら お餅並べていってくれる?」
「はーい」
「そしたら饅頭蒸し終わるまで休憩ね」
「イエス・マム!」

おばさんに言われた仕事を片づけたら一息ついて、椅子に腰掛けた。
いつも見かける野良猫が今日はいない。
遊ぼうと思って台所から煮干し貰ってきたのに…今日は会えないかな?ちょっと残念。

「あ、ゆきむらさまのおんなだ!」
「おんなだ!」

饅頭を蒸している隣でお茶を飲んでいると、幸村とよく遊んでいる子供たちが駆けてくる。
男の子二人と女の子一人の三人組で、三人共この近くに住んでいるらしいけど…

「ねえちゃんもうゆきむらさまとやったのー?」
「やったのー?」
「はぁ!?」

ちょっとこのお子様たち、出会い頭に何を口走ってるの、お姉さんびっくりなんだけど!

「まだだろーなぁ。ぜんっぜん、ふんいきコドモだもん!ゆきむらさまなんか、ぜったいダンゴのことしかかんがえてねえしっ」
「ねえしっ」
「ちょっとふたりとも、おねえさんにしつれいだよぉ…」

…ったく最近の子は〜っ

私はブルブル肩を震わせて、男の子二人を正座させた。

「そこに直れこのマセガキ共!」
「おねえさんコワイ…」

女の子は自分だけ悪いと思ったのか、一緒に ちょこんと座ってしまう。
いや、あなたには怒ってないのよ〜っ
そんな顔しないで。

「ぼうりょくババァ!」
「ババァ!」

「あぁン?」

「「ヒィッ」」

この二人に、こんな汚い言葉教えてる大人はドコのどいつだ。
…今鳥居の下で作業してる人たちのどれか…だよね。
さっきは爽やかに挨拶されたけど。

でもしつけはしつけ!
子供は大人を見て育つんだから。
見本が悪いんだなー?全く。

やるとかやらないとか…この子たちが意味までしっかり分かって言ってたら向こうの人たちタコ殴り決定だ。
 
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