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Yu u ka i i chi re n

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「恥ずかしいなぁ…もう」
「これで仲直りでござるな」

素直に私の手から団子を食べた佐助の頬を引っ張りながら、何本目か分からない団子を口に頬張る幸村。
ご機嫌よろしく笑う彼に為すがままの忍びは少し疲れたような顔をしていた。

それにしても幸村は一体何本団子を食べる気なんだろう。
ここに見た甘党男子…時代の先をゆく男だ(なんか違うけど…)。

「てか、仲直りって…別に初めから喧嘩とかじゃないんだけど」

団子を食べ終える気は無いらしい幸村に付き合って、十何杯目かのお茶を啜りながら私たちは日の暮れかかった空を眺める。

「そうだよ。佐助が私にだけ冷たかっただけで」

佐助の言葉に、私は小さく頷いた。

「えっ俺様 そんな風に思われてたの?」

その瞬間、佐助がショックを受けた顔でお茶を飲み零す。…汚い。

「それにはお館様も頭を抱えておられた」
「えー…若い女が来て嬉しいだけでしょあのオッサンは」
「佐助、思っても口に出して良いことと悪いことが」
「ほんとのことじゃん。愛妻家てか愛女家」

本当に幸村と佐助は仲がいいんだな。
二人を眺めていると、兄弟みたいでなんだか微笑ましい。
打ち解けられるのはもう少しかかるかもしれないけど、今日はここで二人とお団子を食べられて、本当に良かった。
心からそう思う。


「そもそも、今回のことは悠名が「さすけ何考えてるかわかんなーいあのひと苦手ー」と言うから某が一肌脱いだのだ。感謝してもらいたい」

いやちょっと待て。
私そこまで頭悪い子みたいなこと言ったっけ。

「夜中悠名が一人で心細くて泣いてること教えたら「某悠名殿に怖がられているようだ…!どうしたらいいのだろう佐助!」とか喚いてたのはどこの旦那だったかなぁー」
 
そ、そう言えばバレてたんだっけ。
私が布団でめそめそしてたの、佐助は知ってるんだもんね…うわ、今更だけど恥ずかしい。

「兎に角!悠名、今夜も俺様が天井で見張ってるから、安心して寝るんだよ」

頬に集まった熱を冷まそうと掌で扇ぐ私に、気持ち悪いくらいの笑顔の佐助。
なんとなく体を捩る。
なんか顔が近いんですけど…!

「佐助、それは職権乱用では」
「ていうか幸村なんでそんな言葉知ってるの…っい、た…!」

崩れた姿勢を直そうと、ずらした指がお皿に触れた、そのとき。
突然、指先に痛みが走った。

「悠名!」
「如何致した」

二人の声に、店の女の子が駆けてくる。

「お客さん、どこかお怪我でも?」

おかっぱの黒い髪をした小柄なその子は休憩中だったのか三角巾を手に持っていた。

「あ…大丈夫。ちょっと指切っちゃっただけだから」
「でしたら手当を…」

大したことじゃないのに引っ張り出しちゃって悪いことしちゃったな。
 
「絆創膏持ってるし。大丈夫!ありがとね」

心配そうに見ている女の子を余所に私はポケットから絆創膏を取り出し、包装を解く。
絆創膏はいつも制服のポケットに入れているけど、こういうことがあったとき困らないようにと母にきつく言われていたのが役に立った。
こっち来て携帯は圏外で使えないし、今まで当たり前のようにあった交番っていう「迷子になっても大丈夫なための施設」が存在しないと知った時は世界の終りを感じたものだけど…

あ、でも考えてみれば、この時代の「交番」で未来から来ましたとか説明したって頭がおかしい人にしか思われないもんね。
行かなくて良かった…本当に。
お巡りさんらしき人に、「くせもの!どこの間者だ!」とか騒がれて牢屋行きだったかも。
間者って意味も、昨日初めて知ったなぁ。
佐助とのアホ全快な会話が恥ずかしい。

「おお…悠名、それも南蛮の?」

絆創膏を巻く私を見て、佐助と幸村が携帯を見たときと同じような顔で目をキラキラさせている。
 
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