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Yu u ka i i chi re n
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まあ平成の時代にも何とかってSNSサイトの社長みたいな億万長者もいるし、それと似たようなものなのかな。
「異国の言葉を話す政宗殿ならば、悠名殿の心を慰められたかもしれませぬ。早々に帰られて、残念でござるな」
伊達さんが帰っちゃって寂しそうにしてたのは幸村さんでしょ。
そう言いかけて、やめた。
あまりこのネタでからかうのも失礼だ。
「こんな、プレゼントなんかくれちゃって…そんなことされても私は なびかないからね」
「そうそう、ぷれぜんとというのでしたな。やはり悠名殿は学が御有りになる」
「いや、言いたいのはそこじゃないんだけどね」
私、ちゃんと好きな人いるんだから。
でも私、本当に帰れるのかな。
先輩に会えないまま、この世界で死んじゃったりするのかなぁ?
「話を戻すが…悠名殿を屋敷から出すには暫し時間を、と言い出したのは佐助なのでござる」
考え事をしていた私に、幸村さんのその言葉。
「え…な、何で?」
耳を疑うっていうのはこういうことなんだろう。
「やっぱり疑ってるから?」
私はキョロキョロしながら、たぶん今も幸村さんの護衛と私の見張りを兼てどこかに潜んでいるアーミー忍者を探した。
「私、素姓のわからんどこぞの馬の骨だもんね」
とはいっても私の力で見つかる筈がないんだけど。
「でもそれなら普通とっとと追い出すものじゃない?」
なのに何で引き留めるようなことするんだろ?
「否。元々、お館様は悠名殿のために着物や髪飾りを用意させたりして、引き留める気でいた様子。悠名殿のことは、娘が一人増えたと仰ってはしゃいでおられる」
「はしゃいでって…」
信玄様…そんな、近所の子供預かるみたいに…
「佐助も忍びとしての立場はあれど某と同じ気持ちでござろう」
「でも…私、たぶん佐助さんには嫌われてる、と思うけど」
「佐助はあれで悠名殿のことを気にかけているのでござるよ。…ほら、先ほどのねっくれすは佐助が悠名殿に、と某に無言で託(ことづ)けていった」
「……え゛?」
な…なにそれ…!
にっ忍者のくせにキザなことしやがって。
首にかけた小さな桃色の石がいくつも連なってつくられたそのネックレスに、そっと触れる。
これを、あの、アーミーが!?
「Unbelievable!」
「ま、政宗殿化してるでござるよ。もしや気に入らなかったでござるか…」
ていうかそれどういう意味?みたいな顔で聞いてくる幸村さんは放置(すみません)。
そんなことより今はもっと一大事なことがおきているんだよっ
「気に入らないとかじゃなくて!っていうか、コレすっごい可愛いから…アイツあんな趣味悪い格好しときながら私のツボ心得てるところが…」
なんかむかつく。
あとで文句言って…じゃない、お礼を言わないと…あ、なんか腕にサブイボが。
「あぁ…内緒でござったか。悠名殿、せっかく仲良くなれるちゃんすだったのに残念でござる。佐助は照れて先に行ってしまった」
「………」
訝しげな目を向ける私に、幸村さんが冷や汗を浮かべている。
「な、なんでござるか?」
耐えかねたらしい。
そのしらじらしいかんじが、なんか…
なんかむかつく。
「幸村さん、信用できなくなった」
「ええっ、ちょ、ちょっと待ってくだされ!悠名殿っ…誤解でござる…!」
慌てて追いかけてくる幸村さんを振り返らずに歩き出す。今までのは演技だったの?
可愛い甥っ子に騙された気分。
なんだか幸村さん、掴めない人だ。
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