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Yu u ka i i chi re n

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あ、もしかして踏まれて壊れちゃったのかな。
あんな酷い場所に居たんだし。

「何故一人であのような場所に居たか、事情があるなら聞かせてはもらえぬか」

携帯を握り締める私に信玄様が静かに尋ねる。

「先輩が…あ、いえ、もう一人、男の子を見かけませんでしたか?私より1つ年上で、同じ制服着てたはずなんですけど」

失礼とは思ったけれど私は早口にそう聞いていた。
信玄様は必死な私の気持ちをわかってくれたのか 深く頷く。
それから、無言で幸村さんを見た。
意見を聞こうというのだろう。

「男子…でござるか。伊達軍が引いた後、兵を確認したが、そのような骸(むくろ)は…」
「そうですか」

死体が見つかったわけじゃないんだ。
先輩が生きてる保証はないけど可能性はゼロじゃない。
それに、ここに来たのは私だけかもしれないし。先輩が無事ならそれでいいんだけど。

でも携帯が使いモノにならないこの事実。
家族に連絡したいのに これじゃ連絡出来ないじゃないか。

連絡…連絡…そうだ。電話!
電話を借りよう。

「あの、ご迷惑でなければ電話をお借りしたいんですが」

「でんわ?…それはまた、どの様なものであろうか」
「な、無い、の?電話だよ?」

電話無しにどうやって生活してるの。
この地方で偉い人の、こんな無駄に広いお屋敷なのに?

「公衆電話も?ならコンビニはっ?スーパーは?ていうか交番は!?」
「どれも聞いたことのない言葉だが…お主は難しい言葉ばかり話すのう」

信玄様からは困ったような声しか返ってこない。
幸村さんは何だかそわそわして落ち着きなく私の手元の携帯に興味津々で、まったく頼れないし。
佐助さんは佐助さんで、天井裏に戻って何かゴソゴソやってるだけだし。
私はへなへなとその場に座り込む。

携帯が手のひらからぽとりと落ちた。


「もう我慢の限界でござる!」

その瞬間、幸村さんが尻尾でも振るような勢いで私の前にやってきて携帯を指差す。

「悠名殿、それは噂に聞く南蛮の遊び道具にござるか?某にも見せてくだされ」
「あっ旦那何言ってんの!危険なものかもしれないから無闇にいじらないっ」
「これ幸村、儂が先だ」
「ちょっと、お館様も!」

もう、こっちが大変な思いしてるのになんで空気読めないかなこの三人は。

「はぁ…どうぞ、この平成の時代に携帯がそんなに珍しいものなんですか…どこの偏狭の田舎なんですかここは…」
「忝い!」

色々と面倒になって携帯を幸村さんに渡せば、嬉しそうに遊びだした。

「おお、なんと!これが噂に聞くあいふぉーん!」
「i ph●neじゃないよ…ただのOuだよ私のは」

こっちの気も知らないで、なんか親子みたいな二人は人のケータイおもちゃにして遊んでるし。

「駄目だよ旦那!調べるから没収!」

最もらしいこと叫びながら天井裏から飛び降りてきたはずの忍者が、二人から私の携帯を取り上げて…

「なっ何これすっげー!」

着メロが鳴った瞬間大喜びで遊びだすし!!

「佐助、次だ次、他にはどのような仕掛けがあるのだ?」
「ほぉお良くできた小箱だのう。南蛮の玩具とはこれほどまでに…」
「うわ!絵が動いたっ」


一人悲しんでる私は放置かよっ


「もぉお、何時代だよぉ本当にここ日本なの…?」

 
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