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Yu u ka i i chi re n

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がちん、ッ!

「、あぅっ」

もうだめだ。
そう思った時、どん、と硬い何かに背中が打ち付けられるのを感じた。
痛い…でも切られる痛みじゃない。

恐る恐る目を開く。

私は、まだ、切られてはいなかった。
後ろから吹く風で私の胸元には、制服のリボンと一緒に赤い紐みたいなものがはためいている。
何この、鉢巻みたいなの…

全身の力が抜けている私を支えるのは、誰かの力強い腕―――

「ッ、……」
「間一髪…でござるな」

耳元で聞こえたのは、溜め息の混じる男性の声。

「何のつもりだ、真田――」
「政宗殿…」

ゆらり、青の月の兜が揺れた。
 
 
「戦いの最中、勝負を放棄するたぁイイ度胸じゃねえか」
「しかし、この女子は関係ないでござろう」

手にした何本もの刃の、その中の1本を突き付け、青の隻眼が私を捕らえる。
細めた目は、面白い玩具でも見つけたかのように笑っていた。

「Ha!つくづく甘いなお前は。
おい女ァ、いきなり出てきて俺たちのSweet timeをぶち壊しやがって。久しぶりのdateだっつうのに…邪魔してんじゃねえ」

「で、でーとではござらんっ、これは戦!」
「会いに来てんだから同じことだろ…違うのか?」
「まっ、政宗殿の頭はどこまで…!」

私を挟んで、二人の男が痴話喧嘩にしか聞こえない会話が繰り広げられる。
しかも、青い方は何やら赤い方を口説き始めた。


こんな、殺し合いの中で…

…もう……わけわかんない…


 
頭が、いたい。
気持ち悪い…

開けていられなくなった瞼が勝手に閉じていく。
気が遠くなる。

「旦那、破廉恥。女の子抱えてどうする気?」
「おお佐助、ここは某が。この子を頼む」


もう一人、男の人の声が頭上で聞こえた。


「あっれ、突っ込まないねぇ」
「今の状況では――」
「ああハイハイ、責任持ってお守りしますよ」


それからの会話は聞き取れなかった。
一瞬消えた温もりに寂しさを覚えた瞬間、また、別の温もりに包まれる。

土と草と、火薬の混じったにおい。




そして私は―――意識を手放した。



 
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