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二人が連れてこられたのは、弓沢児童公園。
時刻は12時過ぎ。
「この辺りに霊はいるのか」
「あー…確かこの時間になると5歳くらいのガキが遊んでたな」
尺魂界からの指令によると、この近くにホロウが出現するらしい。
極普通の携帯電話とよく似たそれの液晶画面を見せられ、二人は物珍しげに携帯を覗き込む。
「その子供とは友達か?」
「いや…別に話したこともねえ。柘榴は?」
「俺も話したことはないかな」
聞かれたことに二人は首を傾げた。
それがどうしたのだろう。
「恐らく、その子供が襲われる」
「!!」
「そんな…」
そのとき、すぐ近くで「うわぁあああ」と子供の叫び声がした。
三人が振り返ると、蜘蛛のような大きなホロウが小さな子供を追いかけまわしているのが見えた。
ガシャン、
目の前の鉄柵を掴み、一護は迷わず背負った刀に手をかける。
柘榴は既に柵を飛び越えていた。
「待て!!」
ホロウに向かおうとした一護と柘榴の後ろで、引き留めたのはルキアだった。
「助けるのか?赤の他人だろう」
「なっ何言ってんだてめぇ」
「死神とは全ての霊に平等でなくてはならない。今あの子供を助けるというのなら、他の全ての霊も助けると誓え!」
今にも食われそうになっている子供の霊を前にしてはいても、ルキアの突きつけられる条件はそう易々と飲めるようなものではない。
「そ、んなこと言われたって…」
「一護!もうヤバイってあれ」
「…っくそ、」
駆けつけたいのに、ルキアの声がそれを押し留める。
「助けるな!」
今行ってやらないと、本当にあの子供が…
「あうっ!」
子供が足をもつれさせ、うつ伏せに倒れ込む。
ホロウはすぐ近くまで迫っていた。
強く目を閉じる。けれど、再度見開いた時には。
じゃきん、
ほぼ無意識のまま、一護は斬魄刀を振り上げ、その刃を硬い前足に滑らせていた。
「っうらぁ!」
二本の脚を切り落とされたホロウは大きく仰け反り、仰向けに倒れる。
その直後、柘榴が犬のように子供の襟首を銜えてルキアの後ろに降り立った。
「よし、怪我は?って、霊に聞くのも変か」
「うぇえええん!!」
「よーしよし怖かったな。もう大丈夫だからな」
大泣きしている子供を前に、つい舐めてやろうとして踏み止まる。
イカンイカン。
完全に犬に戻ってしまうところだった。
苦笑してその頭を撫でてやりながら一護たちのほうを窺う。
まだ、ホロウを倒したわけではないからだ。
「覚悟を決めたか、一護」
振り切った刀を手に大きく息を吐いた一護に、ルキアが問う。
「決まってねえ」
前屈みの体を起こした一護が吐き捨てるように返す。
「覚悟だとか、ンなモン知るか。俺はソイツを助けたいから助けたんだよ。…てめえは違うのか」
あの時、体を張って一護たちを助けたルキアに、死神の義務だからなどと考えている暇も無かったはずだ。
「死神の義務だからとか…体を張るときっていうのは、そんなんじゃねえだろ」
砂埃の中から、起き上がったホロウが一護へ迫ってくる。
「少なくとも、俺は 違う!」
その巨体が一護に飛び掛ろうとした瞬間、振り返った一護が、斬魄刀をその頭に突き立てた。
「…また俺の出番ないし」
はぁ、とため息をつく柘榴の脇で泣きじゃくる子供の前に一護がしゃがみ込むと鍔の先を額に押し当てる。
子供は青い光の中に消えて行った。
「見事な魂葬だ」
「…帰る」
ルキアの言葉に、一護は仏頂面でそう返し、大股で歩いていく。
そのまま、三人は公園を後にした。
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