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「一護」

何度も何度も夢に見る

「いーちご!」

あの河原で ふたり 、
ぬくもりが消える瞬間を

「ほらっ、笑ってみな」

それでも俺は 生きていた
あれに似たぬくもりに
生かされて いた






空は雲一つなく快晴。
空座町一角のクロサキ医院にもいつもと変わらぬ朝が来ていた。

「いーちごっざくろっおはよう!」
「うざい」
「キモイ」
「がーん!!」

毎朝恒例の父親から放たれるスキンシップ。
こんなものが恒例と言わざるを得ないのも嫌なんだけど、と心の中でため息をつく。
盛大に転がっている一心をそのままに食卓へ。
そのまま柘榴は兄の一護と共に席に着く。

「母さんー息子達が冷たいよー」

ふざけた遺影にすがりつく父親は放っておくことにして食卓へ。
いつもどおり早々と起きていた妹達 夏梨と遊子は既に朝飯を食べている最中だった。

「柘榴、襟まがってる。だらしない」
「一護、寝癖ついてる。かわいい」
「はいお兄ちゃん、柘榴君」
「サンキュ遊子」

お互いの身だしなみを指摘する二人に、こんもりと白米の乗った二人分の茶碗を差し出すのはしっかり者の遊子。
二人は同時に茶碗を受け取り、箸を取る。
一護に倣い食べ始めようとして、柘榴はふと気づいてしまった。
遊子の前髪が、微妙にガタガタなことに。

「あれ、遊子っち前髪切ったの?」
「あはは、昨日の夜洗面所で…失敗しちゃったの」
「眉剃ってたら勢い余って。が抜けてるよ遊子」
「ちょっと夏梨ちゃん!」

どうやら知られたくなかったらしい。
夏梨の横槍を嗜める遊子は頬を微かに染める。

「内緒ってゆったのにー…」
「いいじゃん、ユズは何しても可愛い」

むう、と口を尖らせる妹が可愛くて柘榴は その髪を軽く撫でてやった。

「えへへ、そっかなぁ、お兄ちゃんもそう思う?」
「え…っああ、うん、いいんじゃないか」

何故俺にまで振る!?といった顔をしながらも一護はそう返してやる。
そうしていつもの笑顔に戻った遊子を確認してから、柘榴は食事を再開した。

「柘榴兄ってさぁ」
問題が解決していくらも経たないうちに、行儀悪く肘を着く夏梨がムスッとした顔で口を開く。

「ん?」
「無意識に振りまいてるだろ、そーゆうの。気をつけなよ。こうやって女は勘違いするんだよ」

笑顔で聞き返す兄に、目の前の小学生は一丁前な口をきいてくる。
弁解するわけではないが、心外だなと柘榴は笑った。

「俺は本当に思ったことしか言わないよ」
「ふ、ふうーん…いちにい、本当?」

柘榴の返答に、それはそれで不味いだろう、と夏梨は顔を引きつらせ、隣の一護に意見を求める。

「あー…まぁ…」

つーか俺にも言ってるけど。とまでは言わないことにしたらしい。
柘榴の視線に変な汗をかきながら一護は精一杯曖昧に答えておいた。
柘榴の行き過ぎた愛情表現もといセクハラに関して、余計なことを言えば後で大変なことになる。これは一護が柘榴と過ごしたこの数年間で得た教訓だ。
 
柘榴は、弟とはいっても血は繋がっていない。
家族全員で柘榴と相談して養子として迎え入れた、黒崎家の一員である。

柘榴が黒崎家に来たのは6月中旬の、母の命日。6月17日。
大雨の日だった。

「柘榴」は正確には人間ではない。
もともとは犬だったが、その魂だけが別の人間の体を入れ物にして同化したらしい。
詳しくはわからないが 世話になった病弱な少年が亡くなる前、誓約を交わして自分の魂を少年の体に移したのだそうだ。

余りにも現実離れしていたから家族には柘榴が身寄りがないということしか話していない。
だからこの事実を知っているのは一護だけだ。
これ以上世話になるのは申し訳ないと断固として譲らない柘榴を引き止めたのは父親の一心だった。
電柱は数台倒れたし家の中もめちゃくちゃにするくらいの、人外的な強引さで「うちの子になりなさい」と言った親父の顔は今思い出しても鬼気迫るものがあった。

半ば脅迫に近い形で柘榴に了承させたわけだが。
それでも今では、感謝している。
柘榴には、その笑顔だけで何度も救われたから。
 
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