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「へ?」

手を伸ばした先は、レフ。
音もなくレフの背後に回っていた僕を見て、面喰っている女の子たちにかまわずその手を握る。

「ごめんね。僕たちが先約だから」
「ヨシュア…!」

地獄に仏、といった顔で安堵のため息を漏らすレフの額に軽くデコピンしてやりたい気分だ。
言葉で逃げられないなら詰め寄られる前に逃げてしまえばいいのだ。
逃げ足なら誰にも負けないくらい速いのだから。

「行こう」
「あ、わっ…痛い痛い」
「早く」

少し早歩きで彼を引っ張って、カフェを過ぎた。
言い訳に使ったのだから、今日の夕飯は僕らの家で食べてもらう。強制。

「ど、どこ行くんだよ」
「僕の家。「今日夕飯食べてく」んでしょ、ほら、ちゃんと歩いて」
「…ハイ」

あー、行っちゃった。
残念そうにため息をつく女の子たちに背を向けたあとは振り向きもせずギルドの前を通り過ぎる。
窓から先輩の遊撃手がニヤニヤ見下ろしているのが見えた。
にっこり笑い返して「後で覚えてろよ」目で言えばびくっと肩を揺らして愛想笑いが帰ってきた。

「よ、ヨシュア…」
「何?」

僕を窺うように恐々声を出すレフを見れば子犬みたいに耳が垂れていた。
かわいい。…じゃない。僕は少し怒ってるんだから。
こんなのにほだされちゃだめだ。

「なんか怒ってる?」
「別に」

それに、ただ怒ってるんじゃないんだ。

「心配だよ…レフは押しに弱いところがあるから」
「す…すみそ」

滑舌が悪いのか、わざとなのか。
変な返事を返してくるレフに、僕はまた早歩きになる。

「ちゃんとわかってる?」
「だから謝ってるじゃん」
「酢味噌とか言ってたのに?」

町から僕らの家なんて大した距離でもないのに。
早歩きなのに。


どうしてか、家までの道のりが長い。


「ごめん、ありがと。助けてくれて」
「どういたしまして。早くちゃんと一人で断れるようになりなよ」


居心地悪そうに手を放そうとする君の手を、握る手を強くした。




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思春期ヨシュア君。
 
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