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時計台のすぐ傍。
出会い頭にルックに突っかかられて、大人げなくも本気で相手しているエステルを宥めるのもいつものこと。
いつもと違うのは、隣にレフがいないこと。
普段と違って、今日の任務はレフとは別行動だった。
アイナさんに頼まれごとをしているかららしいけど、一人で行かせるのは少し不安がある。
魔獣に襲われる心配でもなく、迷子になるんじゃないかっていう心配でもなく。
ただ単に、彼は無条件に「女の子」に弱いから。それはもちろん、エステルも例外ではない。

うまく断れずに大惨事を引き起こした過去数件の事件が脳裏に浮かぶ。

「…だからさ…」
「えー…でも…」
「…違うよね、レフ君はさ…」

カフェテリアの隅のほうから聞こえた声に振り返る。
数人の女の子と、あれは…

「いや、勘弁して…ほんと。俺酒なんて飲めないから」
「ノンアルコールだってあるんだってー。いいじゃん、ね?行こう?」
「カルーアとかカシオレとかだったらレフ君だって飲めるよ」
「あんなのシェラさん達が飲んでるのに比べたらジュースだって」

詰め寄られるような形で、木を背に逃げられない状況。
冷や汗だらだらで彼女たちを宥めようと精一杯の笑顔を取り繕うレフに、もしも逆の立場だったら自分もどうなっているかわかったものではないが。

はあ。
小さくため息をつく僕の隣で、ルックを締め上げているエステルは向こうには気づいていないようだ。
案の定、とは思うが。お使い帰りに女の子に取り囲まれている自分の情けない姿など、彼も彼女の視界には入れたくないだろうし。

「仕方ない。助けてあげるか……エステル、先に帰ってて」
「へ?んーまあいいけど。それよりあたしはこのクソガキにお灸を据えないといけないから!じゃーね!」

「はなせー!」
「あ、待ってよ、エステルお姉ちゃん!」

首根っこを引っ掴まれたルックが涙目で抵抗する。
エステルの背を追いかけてパットが小走りで走っていった。

「よくやる…」

お灸っていっったって、そんなに効かないんじゃないかな。
彼も男の子だ。
彼女の気を引けるなら物ともしないだろう。
苦笑しつつ、レフのいるほうへ足を向けた。


「あのさ、俺今日はエステル達に夕食お呼ばれしてるんだよね」
「ぶー。そうやっていつも断るじゃない」
「たまには私たちにも付き合ってよぅ」
「あー…うー…えーと」

いよいよ目が泳ぎ始めている。

「えいっ」軽い冗談で抱きついてきた一人に片腕を拘束され、「ぅぎっ」全身をこわばらせた。
ぎゅっと腕を抱きしめる彼女の胸がレフの腕に当たっている。

「ちょ、ちょっと…!」
「かわいー、レフ君真っ赤になってる!」
「うぁあああ」

不可抗力、なんだろうけど。
なんだかむかむかしてきた。
エステル以外の女の子が、レフに触れるのは気分が悪い。

レフもレフだよ。
嫌なら少し強引に引き離せば済む話だろ。

「も…マジ、ほんと勘弁して…」

限界らしい。
情けない声で懇願するレフにまた上がる黄色い声。
若干泣きそうになっているレフの顔に「きゅん!」とか、僕の胸のどこかで変な音がした。
危ない危ない、僕まで彼女たちの気持ちを理解してしまいそうに…!

「あ…」
「わっ…」
「よ、ヨシュア君…?」
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