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Fee des neiges

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僕の心臓を握るのは君じゃない

手の中と僕を交互に見比べて
何度も瞬きを繰り返したあと、

シュエは頬を紅く染めて、苦しそうに顔を歪めた。




「こ、ゆーの、意味わかってるの、おまえ」

何て顔して、そんなことを言うんだ。
告白なんて初めてじゃないだろうに、おどおどと歯切れの悪い口調。

いつもみたいに流さないで、動揺してくれていることが嬉しい。
笑い飛ばされることだって覚悟したのに。

もうシュエのそんな顔が見れただけで十分だ。
これだけでいいような気さえした。

…でも。
だけど。


だってわからないじゃないか。

好きだとか。
愛してるとか。
大事にしたいとか。
一緒にいたいとか。

どんなに言葉にしたって、抱きしめたって。
それが君の中にどれくらい残ってるかなんて測れるわけがないから。


「こんなものいらない」


突き返された小さな小箱をもう一度、差し出した。

別になんだってよかった。
ただ「一般的」に考えて妥当なものを選んだだけで。

こだわってるわけじゃないはずだ。

それでも不安なのは、「わからない」から。
もう君が受け入れてくれるだけで安堵してた頃とは、変わってしまったから。

「これで、俺のものになってよ」
「やだ」

即答かよ。
聞き返そうと口を開こうとするのを遮って、またシュエが短く「嫌だ」と呟く。

「ぜってー、嫌だ」

突き出した舌に苦笑して、染まったままの頬に触れた。
君は払いのけずに見つめ返してくる。
頬から下降させた指でその唇をなぞっていく。

「傷つくなぁ」
「俺は誰のものにもならない」

薄く開かせた唇に指の腹を押し当てる。
歯列を割ったそれが深く飲み込まれた。

「勝手に傷ついてろ」

小さな水音にどきりとする。
そんなつもりは一切ないんだろうけど、伏せた目がやけに扇情的だ。

「でも……お前を傷つけていいのは俺だけだ」

じわ、疼く痛みに片目を閉じる。

「…うわ、」

気づけば君が僕の薬指に噛みついていた。


真っ赤に傷ついた噛み跡が輪を作る。


(なんだか指輪みたいだね、) 


「グレ、」
「なに?」


雰囲気にのまれているときの素直なシュエは普段以上に可愛い。

仕返しにキスしたかったから、そんな馬鹿な言葉は飲み込んだ。



**
11'07/03 20:11 -09/16 修正
毎度ばかっぷるです…

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