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Fee des neiges

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贔屓にしている店の店主の甥というだけで、見合い話が持ち上がるものなのだろうか。

思えば世間話をしていただけだった。
見合いの内容ではない。
また会いましょうと言った彼女の言葉は、また他愛もない話をしようという意味だったのかもしれない。

「グレイ」

見合いなんて、柄じゃない。
彼女と自分は、釣り合わないし、それを望んでもいない。

「俺はどこにも行かないし、今の生活を変える気もないよ」

自分には、グレイくらいがちょうどいいから。
好きとか、恋とか、そういうのはよくわからないけれど。

「お前が心配することなんて、何もねえから…」

宥めるように言った言葉に、グレイが顔を上げたのがわかった。

「でも、なんかちょっとさ…言っていい?」
「何だよ」
「相手がちゃんとした家の令嬢だったから、お前ほんとに結婚とか考えてんのかなって思って」
「…?」
「それなら、応援しなきゃいけねーのかなとも、思って」

応援なんか、ぜってーできないけど。

付け足された言葉にまだ子供だなと笑えた。
それでも少し驚いたのは本当だ。
考えてもみなかった。
いつも勝手なグレイがそんなことを思っていたなんて。

「だから正直、焦った」

ぽすん。
グレイの髪が首筋を擽る。

「俺…まだお前の隣にいてもいいんだよな?」
「許可した覚えはないし、するつもりもないけどな」
「勝手にしろってことだ」
「そーだよ」

そうだよ。

「俺だって、邪魔したと思うよ」

首を持ち上げて、短かく囁く。
陳腐すぎて笑える、何の保証にもならない言葉。

こんなことでお前が喜ぶなら。笑うなら。
何回だって言ってやるから。


「すきだ」


かすれた声はグレイの口へ吸い込まれていった。

「っ…、ふ…」

首に回った腕に引き寄せられて、さらに深く口づけられる。
少し苦しい。
それでも、離れそうになる前に重ねた。
歯列をつつく舌に眩暈がする。
上あごをなぞられて、舌を絡め取られる度に呼吸を忘れそうになる。

「人に、見られるかもしんないのに…いーのかよ」
「誰もいない」

「…なんか余裕でムカつく」
「そうでもない、俺も」

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