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Fee des neiges

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「あの人、毎年教会とか公的施設に多額の寄付してるらしいよ。勿論ギルドにも」
「感謝しなきゃいけねえって?」
「うちのギルドが無茶苦茶やってる中で、尻拭いしてくれてる人もいるってことだよ」

そういう意味では確かに勝ち目ないかもな。
付け足せば泣きそうな顔で睨まれた。

「もともと断るつもりだったんだよ。それをお前が乱入してくるから…」

ややこしくしやがって。
溜息がちにシュエは砂利ばかりの道を踏みしめる。
後ろからついてくるグレイは歩幅を狭めても隣に来ようとはしてこなかった。
そんなにキツく言ったつもりはなかったが、相当凹んだのだろうか。

「…ちょっと休憩するか?」
「ああ…そうだな」

休憩がてら寄った小さな公園は無人だった。
子供が遊んだあとの玩具が砂場に突っ込んだままだ。
シュエは1秒もかからないで滑り終えてしまうほどの小さなゾウの滑り台に腰かけて、一息つく。
グレイはシュエの背に寄り掛かるようにして背中合わせにゾウに座った。

桜も殆ど落ち切って、緑の増えた街路樹が風に踊る。
青から赤のグラデーションに飛行機雲が一筋上って行った。
屋根の上では、親子連れの小鳥が旋回している。

グレイは凹んだままだし、自分も少し疲れていたから、休憩出来て良かったと思う。
苛々していた気持ちが一切なくなっている。

どこかほっとしているのは何故だ。
初対面で、見合いの相手が目の前にいるのに余計なことを吹聴されて嫌な思いをしたというのに、それほど怒っていないのも不思議だ。

「悪かったよ…ごめん。なんかお前、やたらあの子に気に入られてたから、ちょっと妬けただけだ」
「わかってんなら余計なことすんな。信用ないみたいで、なんか嫌だ」

口走った言葉に自分で驚いた。
信用されたいのか…自分は。
まるで浮気の弁解みたいだ。わけがわからない。
ああまた苛々してきた。今度は別のことで、なんだろうけど。

そもそも自分は何をしに行ったのだろう。
叔父には断ってこいと言われ、自分もそのつもりだった。
けれど、相手の立場を考えてみれば何だかおかしな話だ。
普通いいところの令嬢というのは、それこそ同じ生活環境にあるご子息との縁談があるに違いないのだ。
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