TOP
Fee des neiges

page list
_______4

「悪いがコイツはやらねえぞ姉ちゃん」
「生憎ですけれど、今は「お見合い」中。部外者は席を外していただける?」

彼女の言葉にグレイの眉間に皺が一本増えたのが見えた。
機嫌は最悪だ。只でさえ人のいい顔でないというのに、人相をさらに悪くさせている。

「部外者じゃねえ」
「同業者で、お友達というだけでしょう?」
「ただの友達じゃねえ。シュエのファーストキスの相手は俺だ」
「まぁ、お可哀想にシュエさん、なおのこと私が消毒して差し上げたいですわ」
「ああ?人をばい菌みたいに…」

「ってちょっと待てグレイ、お前何余計なこと喋ってんだコラァ!」
「本当のこと言っただけだろ」

黙っていれば余計な情報をあれこれと。
流石のお嬢様もドン引き確実だ。

「いや、違うからあれは違うからっ」
「諦めろよ…つうか認めろ。俺はお前が好きだしお前も俺が好、」
「黙れコラ引き千切るぞ」
「…すいません」

もとより断るつもりではいたが、あまり妙なイメージを持たれても困る。
けれど漸く飛び出した声は、否定すればするほど情けないものへと変わるだけだった。


* * *



「次はグレイさん抜きで会いましょうね。二人きりで」

明らかな宣戦布告。
お嬢様はにっこり微笑んでシュエの頬にキスをした。
ローズマリーの香りが鼻をかすめたときは一瞬眩暈がしたほどだ。
その名に相応しく、可憐な花。
思えば彼女も同じ名だった。
大胆なその行動に仇でも見た顔で殺気立つグレイを押しやり、送迎の車は勘弁してもらって徒歩で帰路につく。

「くそ、あの女」

屋敷を出てすぐ悪態をついたグレイは消毒と称してシュエの頬に数回口づけた。
こんな外で、誰が見ているかもわからないというのに。
された数だけ蹴り飛ばし、とりあえずは許してやる。
あれくらいの戯れ、かわせないようではいつまでも子供のままなんじゃないのか。
そういう子供っぽいところが可愛いのだが。
そこまで考えてから、苦笑した。
振り回されて嫌な気があまりしないというのも考え物だ。
このどうしようもない友人に、自分も存外毒されている。


35/43

  
しおり

TOP
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -