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Fee des neiges

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「嫁…か」

ジュエは誰に聞かせるでもなく呟く。
意を決して自分の部屋へ。「例の物」を取りに行った。

客足が減ったところで叔父は甥に向き直る。
洗い終えたグラスを磨いていたシュエは、流石に耐えかねたのか手を休め叔父が話しかけやすいようにしてやった。

「あーごほん、シュエ」
「何?さっきから…」
「いや、ちょっと預かったんだけどな…」
「んー写真?」

渡された二つ折りの書類。
写真には、着物を着た女性が写っていた。

「結構かわいい子じゃん」

これが「何」なのか判らないほど鈍感でもないはずだが、シュエは素直にそう口に出していた。

「お、可愛いっつったか今」
「あー、まぁ普通に」
「ありがとう!愛してる!いやー良かった良かった。でも断れよ?どんなにその子がいい子でも俺はまだお前が婿に行くなんて許さないからな」
「ちょっと何の話してんだよ、おい」

くわっと乗り出して来て手を握る叔父。
振り払おうとするが、がっちり押さえられて身動きすら取れない。
この食いつきっぷりは一体何なんだ。

「見合いしてきてほしいんだ、お前に」
「み…」

……見合い?

にっこり頷く叔父の笑みに、此方の笑顔は引き攣る一方だ。
まだうんとも言わないうちから勝手に話がまとまっていくのに横から口を出すのもままならず、気が付けば「その日」がやってきてしまった。

* * *



場所は先方のお屋敷でという話だったため、出向いてはみたが。
かなりの豪邸に目が回った。
迎えの車も足を踏み入れるのが恐ろしいくらいだったというのに、その上屋敷の中なんか入ったら緊張で死ぬかもしれない。
家に招くだけで相手の息の根を止められる人間もいるのだと本気で思った。

「ふふ、本当に可愛らしい方でいらっしゃるのね。叔父様が自慢なさるのも納得ですわ」

典型的お嬢様は栗色の巻き髪に桃色のワンピース姿でシュエを出迎える。
「おかけになって」と言われても広すぎるソファのどこに腰かけていいものやらわからない。
もうこれはカルチャーショックどころではなかった。
初めから住む世界が違う。
それは相手も察しているだろう。

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