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Fee des neiges
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面白くない。
シュエが一緒なら、どこへだって行くのに。
どんな依頼だってこなしてみせるのに。
自分が思うばかりで、シュエは自分と一緒では嫌なのか。
そんなにナツのお守りを押し付けたいのか。
飛躍させた解釈が脳内をめぐる。
愛とか恋とか、考えてしまう己の全てが邪魔だ。
胸の内を見せないように大事にまとっているから、本当に思っていることがさらけ出すことができないのだ。
伝わらないのがそのせいならば、この身さえ邪魔なのだと苛立つ。
「怖ぇ顔してんなよ。グレイ」
尖らせた唇をシュエに摘まれて、己もやり返す。
羽織ったパーカーから覗く、首筋の鬱血に気分は簡単に晴れていった。
自分も安いものだ。
最後までさせてもらえないことに満足などしていないけれど。
シュエが嫌がることはしたくないから。
「ほら、機嫌治せ」
「ならキスさせろ」
「えーなにそれ。エッチ」
「はぐらかしてんなよ…」
耳元で囁いて、軽く噛む。
ビクッと肩を揺らすシュエからの甘い匂いにくらくらする。
キャラメルの匂いではない。
お前の匂いに酔うんだ。
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