今ではキセキの世代と呼ばれる彼らにも、ボクの事情を説明しなければならない。
誠凜とは別の…ボクの大切なチームメイト達だから。


遠く離れた彼らにはメールで伝えるしかない。
だけど口で伝えるには簡単だったけど、いざメールで書くとなると難しかった。
おまけにボクは黄瀬くんみたいに早く文字を打てるわけでもなく、機械に関しても疎い方だと自覚している。
考えた末、出来上がった文章は二行だった。

あっさりしすぎかな…と自嘲してしまうけど、ボクはそのまま送信ボタンを押した。



それから、ボクはやることもなかったから少し歩いてみることにした。
まだ身体はボクの意思通りに動いてくれる。
時間帯が昼過ぎということもあり、太陽はまだ上空にあって明るい。

家までの帰路を歩いていれば、ふとバスケのコートがある広い公園が視界に入った。
アスレチック施設や休憩所もあり、人がよく集まる場所だが今日は子供達が数人だけだった。

(そういえば…ここのバスケコートでみんなとバスケしましたよね)



体育館が使えない日はみんなでここに来たこともあったし、テスト期間で部活動禁止なのに黄瀬くんと青峰くんがここでバスケしてたことが赤司くんにバレたこともありましたね…。

過るのは彼らとの記憶ばかりだった。

(…今頃、みんなは練習しているんだろうなあ)

青峰くんは練習に参加してくれているでしょうか。
黄瀬くんは先輩方に迷惑をかけていないといいんですが。
緑間くんはラッキーアイテムを今日も持ち歩いているんでしょうね。
紫原くんは相変わらずたくさんお菓子を用意しているんですかね。
赤司くんは…彼は心配いらないでしょう。

そうして…いつも浮かぶのは彼らのこと。
中学時代、ボクの方から離れていったのに…彼らと再び分かりあえてから、どんなに彼らの存在が大きかったか実感した。

「やっぱり…ボクのことは言わない方が良かったんでしょうか…?」

自分に問い掛けるように、ぽつりと呟く。
折角昔のように戻ってくれた彼らの練習を邪魔したくはないし、辛い気持ちにさせたくもない。
結局ボクは、中学三年のあのときのように、彼らの前から何も言わずに消えた方が良かったんじゃないか―――。

「テツっ!!」

そうボクを呼ぶのは一人しかいなかった。
どれくらいボーッとしていたかは分からないけれど、ボクの耳が確かに捉えた声は青峰君のものだった。

「青峰くん…?」

バスケ以外では全く合わなかった青峰くんが、どうしてボクの居場所が分かったんですようね…?
不思議で仕方ないけれど、青峰くんはボクの方へ走ってきてくれた。

「てめっ…!あのメール、どういうことだよ…!」

青峰くんは呼吸を整えながら、ボクの肩を強く掴んだ。
まさか桐皇からこっちまで走ってきたんですか…それほど距離は遠くないですけれど、君って人は…。

「テツ…どうなんだよ、あれは…」

「残念ながら、本当のことです」

そう告げれば、肩を掴んでいる彼の手から少し力が抜けた。
ウソだろ…と小さく呟く彼の声が聞こえた。

「大ちゃん!私を置いていかないでよ!!…って、テツくん!?」

後ろから桃井さんも走ってきて、青峰くんに隠れたボクを見つけて驚いたような声を上げた。
彼女もボクの近くへ寄って来る…聞きたいことは、青峰くんと同じだろう。

「ボクの命は、あと数日しかもたないんです」

今にも泣きそうな桃井さんと、辛そうな青峰くんの表情を見て心が痛んだ。


ボクはいつもの無表情を貫いて言えていましたか…?



120814



title:秋桜-コスモス-


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